日本大百科全書(ニッポニカ) 「展望レポート」の意味・わかりやすい解説
展望レポート
てんぼうれぽーと
日本銀行が、年4回(通常は、1月、4月、7月、10月)の金融政策決定会合において、向こう3年間の経済・物価見通しとその見通しの上振れ要因と下振れ要因について詳細に記述した報告書。金融政策運営に関して対外公表されている報告書・資料のなかで、今後の金融政策の方向性をみていくうえでもっとも重視されている。正式名称は「経済・物価情勢の展望」であるが、一般に通称の「展望レポート」で言及されることが多い。
とくに、2013年(平成25)4月に「量的・質的金融緩和」が導入されて以降は、物価上昇目標2%程度の達成時期についての記述部分がメディア、エコノミスト、投資家などから注目されている。この達成時期が何度も先延ばしされていることや、エコノミストの見通しとの乖離(かいり)が大きい点について、日本銀行の見通しの客観性を疑問視する見方もある。
さらに、展望レポートでは、金融政策委員会の各メンバーによる、向こう3年間の実質成長率と消費者物価(生鮮食品を除く、いわゆるコア消費者物価)の見通しについて、「政策委員の大勢見通し」とよばれる一覧表において、最大値と最小値を一つずつ取り除いた「レンジ」と「中央値」を示している。このうち、メディア、エコノミスト、投資家などが注目しているのが中央値で、その数値が前回の見通しからどのように変化したのかが重視されている。さらに、「政策委員の経済・物価見通しとリスク評価」とよばれるグラフでは、メンバー全員(無記名)の経済成長率と消費者物価の見通しとともに、その見通しを「上振れリスクが大きい」「下振れリスクが大きい」「リスクは概ね上下にバランスしている」の三つに分け、記号を使って示している。
なお、展望レポートは、「基本的見解」と「背景説明」から構成される。金融政策決定会合で投票によって決定しているのは、このうちの基本的見解である。背景説明は、基本的見解の背景にある経済・物価情勢を詳細なデータをもとに日本銀行スタッフが執筆を担当している。
[白井さゆり 2016年12月12日]