改訂新版 世界大百科事典 「岩石系列」の意味・わかりやすい解説
岩石系列 (がんせきけいれつ)
rock series
ある地域に産出するある時代の火成岩群のなかで,成因的に関係のありそうなものを化学組成上のパラメーター(たとえばSiO2,(FeO+0.9Fe2O3)/MgO,Na2O+K2Oなど)を使ってグラフ表示したとき,線上に並ぶことがある。この場合,これらの岩石は一つの岩石系列に属するという。日本列島で用いられる岩石系列には,(1)低アルカリソレイアイト系列,(2)高アルカリソレイアイト系列あるいは高アルミナ系列,(3)アルカリ系列,(4)カルクアルカリ系列がある。東北日本弧では産出地が(1)(2)(3)の順に海溝側から大陸側に向かう規則性があるが,西南日本弧では(1)を欠く。(4)は(1)(2)(3)とともに全域で認められる。(1)は玄武岩および安山岩が主で,デイサイトも伴い,流紋岩はほとんどない。(2)は玄武岩が主で,安山岩,デイサイト,流紋岩は少ない。(3)はアルカリカンラン石玄武岩が主で,粗面安山岩や粗面岩などを伴う。(4)は安山岩やデイサイトが主で,流紋岩を伴い,玄武岩はほとんどない。化学組成上の特徴は(1)(2)(3)の間では(1)から(3)に向かってK2O,K2O/Na2O,Ba,Sr,Rb,希土類元素,La/Sm比,Hf,Th,U,Pbが増す。(1)(2)(3)と(4)との間では(4)の方が分化に伴うSiO2,H2Oの濃縮があり,Feはより酸化し,Ti,Vがとぼしく,Fe/Mg比が小さい。またマグマの温度は(4)の方が低温である。久野久(1950)は化学分析によらずに顕微鏡下での石基鉱物の同定による非アルカリ岩の岩石系列区分を提案した。ピジョン輝石質系列は石基に単斜輝石があるもの,ハイパーシン質系列は石基に単斜輝石と斜方輝石あるいは斜方輝石のみがあるものを指す。ジェークスP.JakesとギルJ.B.Gill(1971)は(1)を島弧ソレイアイト系列と深海性ソレイアイト系列に分けて産地による組成のちがいを示した。Na2O/K2O比は前者が4~6,後者が10~15,TiO2は前者が0.5~1.5%,後者が1.0~2.5%,Baは前者が50~150ppm,後者が6~30ppmなどの差がある。(3)あるいは(4)で分化に伴ってK2Oに富むようになる系列をショショナイト系列と呼ぶことがあるが,日本には産出しない。
執筆者:宇井 忠英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報