東洋画に用いる顔料の一種。群青(ぐんじょう)、緑青(ろくしょう)、朱(しゅ)、丹(たん)、代赭(たいしゃ)などがある。これらは、群青石、孔雀石(くじゃくいし)(緑青)のような鉱石、すなわち「岩もの」を粉末にしたもので、粒子が粗く、水に溶けないため、膠(にかわ)に混ぜて用いる。つまり膠を一種の接着剤として機能させているわけで、そのため岩絵の具には剥落(はくらく)の危険がつねに伴う。ほとんど不透明で、濃彩を施すのにきわめて有効な顔料といえる。ことにわが国で近世初期、大いに流行したいわゆる金碧障屏画(きんぺきしょうへいが)は、当時濃絵(だみえ)ともよばれたが、これはその名のように、金地に濃彩を施したもので、群青、緑青、朱などの岩絵の具を大量に使ったものである。なお近代になって、金属を酸化させて化学的に人造の岩絵の具をつくることも行われるようになり、これは天然の岩絵の具より廉価で、色相にも幅があるため、よく使われている。これらの岩絵の具に対し、藍(あい)、臙脂(えんじ)のように水に溶ける植物性の顔料を水絵の具、また同じく膠に混ぜて用いるが、黄土、朱土などを泥絵の具とよぶ。
[榊原 悟]
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