都会地の大気のように硫黄(いおう)化合物を含む屋外環境中に長期間さらされた銅の表面に形成される美しい緑色の保護性のある皮膜。緑青の主成分は塩基性硫酸銅CuSO4・3Cu(OH)2であり、これは銅と硫黄化合物との反応生成物である硫化第一銅Cu2Sあるいは硫酸銅CuSO4がさらに酸化されて生じたものである。大気からの硫酸の供給が十分でないような場合には酸化が十分進まず、銅の表面は暗赤褐色のままにとどまる。海岸地帯のように海塩粒子を多く含む大気にさらされる場合には塩基性塩化銅CuCl2・3Cu(OH)2を含む緑青が生ずる。緑青の色調は美しいので、建築物の銅屋根の着色などに用いられている。自然に緑青が形成されるまでには長期間かかるので、人工的に緑青を形成させる処理も行われている。これには種々の方法があるが、たとえば硝酸銅、塩化アンモニウム、アンモニア水、酢酸などを溶解させた水溶液を銅の表面に塗布して温湿所に放置しておくというものもある。この場合には塩基性硝酸銅が生ずる。わが国では昔から緑青は有毒であるといわれているが、実際に天然の緑青について衛生学的研究を行った結果によると、毒性はほとんどないとされている。
[杉本克久]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
岩絵具の緑青は天然産のくじゃく石(マラカイト,塩基性炭酸銅CuCO3・Cu(OH)2)であるが,金属銅表面の腐食生成物をいうときの緑青は,むしろ塩基性硫酸銅CuSO4・3Cu(OH)2を主成分とし,さらに上記の塩基性炭酸塩などがまじるものとされている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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