改訂新版 世界大百科事典 「工業雷管」の意味・わかりやすい解説
工業雷管 (こうぎょうらいかん)
blasting cap
導火線を用いて点火する雷管。爆薬を確実に起爆する目的に使用する。ニトログリセリンやダイナマイトは,古くから使われてきた黒色火薬と異なり,導火線だけでは爆発しない。1864年にA.ノーベルは銅管体に雷汞(らいこう)を詰めた雷汞雷管を発明し,これらの新しい高威力爆薬を確実に爆発させることに成功した。現在用いられている雷管は,管体の底部に添装薬を,その上に起爆薬を詰め,さらに穴のあいた内管でふたをした混成雷管で,導火線を挿入して口じめをして使用する。管体の材質は銅,アルミニウム,鉄である。添装薬としてはペントリット(PETN)またはテトリルが用いられ,起爆薬には,日本ではジアゾジニトロフェノール(DDNP)が,外国ではアジ化鉛が用いられる。装薬量に応じ1号から10号までの種類があるが,日本で用いられるのはもっぱら6号雷管で,管体(長さ35mm,外径6.5mm),添装薬,起爆薬などはJISに規定されている。工業雷管の起爆性能は,厚さ4mmの鉛板を打ち抜く鉛板試験,30%のタルク(滑石末)を加えて鈍化したTNTを起爆する鈍性爆薬試験で確認される。日本では最近は電気雷管が主として使われるようになり,工業雷管の使用量は激減している。
執筆者:吉田 忠雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報