アジ化鉛(読み)あじかなまり(英語表記)lead azide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アジ化鉛」の意味・わかりやすい解説

アジ化鉛
あじかなまり
lead azide

アジ化水素酸の鉛塩。鉛アジドともいう。窒化鉛は誤称。化学式Pb(N3)2 式量291.26。アジ化ナトリウムの希水溶液をかき混ぜながら、これに酢酸鉛(Ⅱ)の希水溶液を加えると、針状晶として沈殿する。結晶水中でも爆発しやすいので、工業的にはアジ化ナトリウム水溶液に約2%のゼラチンかデキストリンを加え、結晶の成長を防いで無定形粒状物として製造する。純粋なものは無色の結晶で、斜方晶系の安定型(α(アルファ)型)と、単斜晶系の不安定型(β(ベータ)型)が知られる(α型の比重4.71、β型の比重4.93)。冷水エタノールエチルアルコール)にはほとんど溶けないが、酢酸鉛(Ⅱ)の水溶液や希硝酸に溶ける。沸騰水にわずかに溶けるが、アンモニアを発して分解し非爆発性の物質となる。発火点は330℃で、点火またはわずかの衝撃、摩擦によって瞬間的に爆発する。起爆薬として軍事用の雷管、信管に用いられるが、結晶状のものはあまりに鋭敏であるなど欠点もある。酢酸アンモニウム水溶液に溶かし、二クロム酸ナトリウムを加えるか、亜硝酸ナトリウム水溶液中で硝酸を作用させて分解することができる。有毒。皮膚炎をおこす。

[守永健一・中原勝儼]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アジ化鉛」の意味・わかりやすい解説

アジ化鉛
アジかなまり
lead azide

爆発性化合物。化学式は Pb(N3)2 。酢酸鉛 (II) 水溶液とアジ化ナトリウム水溶液から得られる無色針状または白色結晶。α型 (斜方晶系,比重 4.71) とβ型 (単斜晶系,比重 4.93) との2種があり,β型は不安定で,爆発しやすく,加熱 (約 300℃) または破砕,摩擦などによっても瞬時に爆発する。冷水,アンモニア水,アルコールなどに不溶。熱水にわずかに溶け,徐々に分解しアンモニアを発生。酢酸,希硝酸に易溶。起爆薬として信管,雷管などに使用する。

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