幻想建築(読み)げんそうけんちく(その他表記)fantastic architecture

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「幻想建築」の意味・わかりやすい解説

幻想建築
げんそうけんちく
fantastic architecture

機能的な要素や技術的な可能性をはるかにこえるイメージによってつくられる建築。一般に,近代以降に建築の機能性や技術の可能性が追求されるようになった時代に,あえて幻想性を求める傾向をいう。その嚆矢は 18世紀の C.ルドゥー,E.ブレ,J.ルクーらのプロジェクトであり,ブレのニュートン記念堂の計画案は巨大な球形として構想され,開口部からの光が闇の中に星辰の図を描き,夜は中心の強烈な光源が内部を光で満たすものであった。次いでアール・ヌーボーの時代には,V.オルタや H.ギマール鋳鉄の自由な造形を生み,A.ガウディは独特な世界をつくりだした。さらにイタリアの未来派,ドイツの表現主義,ロシアの構成主義が自由で可塑的な形態から抽象的幾何学的なものまで生んだ。アルプス山中にガラスの建築を夢みた B.タウトの『アルプス建築』はこの時代を代表する計画案である。また無目的の構築ともいえる建築では,18世紀の風景式庭園に登場したフォリーもこの範疇に入る。狂気衝動が構築に向わせた構築物,郵便配達員 F.シュバルがフランス南東部オートリーブにつくった「理想宮」,アメリカ,ロサンゼルス郊外にタイル職人サムが建てた「サムの塔」,日本の「二笑亭」などもこれに入る。

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