サルトルの著作。1960年刊。『存在と無』(1943)に続く第二の大作である。基本的にマルクス主義の正当性を肯定しながらも、その硬直した教条主義を批判し、人間の自由を肯定する実存主義をそのなかへ織り込むことによって、マルクス主義に若き活力を取り戻そうとするものであった。弁証法的理性とは、歴史を客観的事象として外から眺める分析的理性と違って、実践的に歴史のうちに参入することによってその意味を了解しようとするものである。またそれは、「歴史的、構造的な人間学」を構成しようとする試みともされている。この著書には長文の「方法の問題」という論文が巻頭に置かれているが、本論は第一巻のみで未完に終わっている。
[西村嘉彦]
『平井啓之訳『方法の問題』(1962・人文書院)』▽『竹内芳郎・矢内原伊作・平井啓之・森本和夫・足立和浩訳『弁証法的理性批判』全三巻(1962~73・人文書院)』
… このように彼が一時代の代表的知識人と見なされたのは,むろん彼の思想が他に類のないほどスケールの大きなものだったからであるが,同時に彼が時代とともに滅び去るつもりで,ひたすら同時代人に語りかけたためでもあった。その著作は膨大な量に上るが,上記のもののほか重要な作品は,まず第3期の理論的到達点である《弁証法的理性批判》(1960),また〈実存的精神分析〉を縦横に駆使しながら作家の形成を解明した《聖ジュネ》(1952)と《家の馬鹿息子――フローベール論》(1971‐72),戯曲として《出口なし》(1944),《汚れた手》(1948),《悪魔と神》(1951),《キーン》(1953),《アルトナの幽閉者》(1959),それに,〈文学とは何か〉や〈共産主義者と平和〉など,そのときどきの状況に応じて書かれた文章を集めた《シチュアシオン》全10巻などである。 なお,サルトルが第2次大戦後の日本に与えた影響はきわめて広く,また深い。…
※「弁証法的理性批判」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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