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人間学 にんげんがくanthropology

翻訳|anthropology

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

人間学
にんげんがく
anthropology

人間に関する学という意味では,自然科学的,歴史学的,社会学的な側面からなされる人間研究を包括するが,一般には人間の本性や,人間と世界との関係などを哲学的に研究する一分野。「哲学的人間学」ともいう。また日本でいわれる「人類学」も anthropologyである。ソクラテスの哲学精神が「なんじ自身を知れ」との命題に発したように,人間本性の研究は古来から哲学の主要問題であった。フランスのモラリストたち,イギリス経験論者,あるいは I.カント,L.フォイエルバハなどはその代表である。 20世紀初頭 M.シェーラーは,従来の歴史観のうちにみられる英知人 homo sapiens,工作人 homo faberなどの人間理解の類型は,人間の一側面の抽象にすぎず,人間を事物とみなす観点から行われたものとして排し,精神と衝動の2原理からなる「精神に満たされた生物」としての人間 (「全体人間」という) を,対象化せずに現存在論的に研究することこそ人間学であると提唱した。この考えは実存哲学,特に M.ハイデガーに強く影響している。現代の人間学としては,ほかに A.ゲーレンに代表される文化的人間学,L.ビンスワンガー,M.ボスらの精神分析的,実存主義的人間学,M.ブーバー,D.ボンヘッファーらの宗教的人間学などがある。

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デジタル大辞泉の解説

にんげん‐がく【人間学】

人間の本質を哲学的に研究する学問。神や宇宙に対する人間の関係あるいは身体や精神の在り方など、人間に関する考察は古くからなされてきたが、人間学という概念は近世になってからできたもので、哲学の基礎学としての性格が強い。→人類学

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世界大百科事典 第2版の解説

にんげんがく【人間学 anthropology】

ギリシア語のanthrōpos(人間)とlogos(言葉,理論,学)とに由来する16世紀のラテン語anthropologium,anthropologiaにさかのぼる用語で,〈人間の学〉を意味する。訳語の歴史は複雑で,1870年(明治3)西周(にしあまね)による〈人身学〉〈人学〉〈人道〉〈人性学〉の試みのあと,81年の《哲学字彙(じい)》は人と人類を訳し分け,anthropologyを〈人類学〉と訳し,84年の東京人類学会創立以来,明治・大正期には,もっぱら獣類畜類と区別された人類の自然的特質の経験科学すなわち〈自然人類学〉の意味で使用され,人類の文化的特質に関する〈文化人類学〉としての使用は昭和期のことである。

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大辞林 第三版の解説

にんげんがく【人間学】

〘哲〙 人間の心身の本質を論究する哲学的考察。宇宙における人間の位置、人間の身体や気質、魂や精神などの在り方を研究し、古来哲学の一部門をなす。これと区別される現代の科学的人間学は人類学と呼ばれる。アントロポロギー。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人間学
にんげんがく
anthropology英語
Anthropologieドイツ語
anthropologieフランス語

日本語の人間学は、日本語の人類学とともに、本来、「アントロポロギー」の訳語である。
 アントロポロギーは、初め生物学的な自然人類学であったが、のちに文化人類学が自然人類学と並ぶ人類学の一分野とされ、そこには、考古学、民族学、民俗学と並んで、社会人類学、心理学的人類学、さらには教育学的人類学まで含まれるようになってきた。他方、哲学において人間を研究するアントロポロギーは、「人間学」と訳され、これは哲学史とともにつねに存在してきたが、とりわけ近世のカント以来、人間学的傾向が強くなり、20世紀初めにシェラー、プレスナーによって哲学的人間学が提唱されてのち、実存哲学における人間中心的傾向と相まって、従来の文化人類学から展開してきた心理学的・社会学的・教育学的人類学も、心理学的人間学、社会学的人間学、教育学的人間学という訳語があてられることも、今日しばしば見受けられるようになっている。
 たとえば、ガダマーとフォーグラーの共編になる『Neue Anthropologie』(1972~75)は、アントロポロギーの従来の訳語に従えば、生物学的人類学、文化人類学、社会人類学、心理学的人類学、哲学的人間学という六編を含むものであるが、これが近年、『講座現代の人間学』という題名の下に訳出されているなどは、その一例である。しかし「人間学」の語は本来、「哲学的人間学」を意味してきたし、現在もその方向が中心的であるといえる。[清水窕子]
『ガダマー、フォーグラー編、前田嘉明他訳『講座 現代の人間学』全七巻(1979・白水社)』

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