… 回り舞台を考案したのは,宝暦期(1751‐64)の大坂の作者並木正三といわれるが,これを江戸へ移して完成させたのは8世長谷川勘兵衛だという。その後,舞台へ切穴をあけて人物や道具を上下させるセリの機構をはじめ,道具の一部を綱で引っ張って前後左右に出したり引っ込めたりする〈引(ひき)道具〉や,壁,風景などの張物の一部を四角に切って中央に軸を入れ,回転させて人物を瞬時に出没させる〈田楽(でんがく)返し〉,舞台装置全体を前後に半回転させて場面を転換する〈がんどう返し〉などが考案された。文化・文政期(1804‐30)には怪談狂言の流行につれて変化に富んだ仕掛物がくふうされ,天保期(1830‐44)には舞踊劇や様式的な古典劇で舞台に敷く〈置(おき)舞台〉が始められている。…
…しかし現在では,回り舞台の原形はすでに地芝居やその他の芸能に存在していて,それを正三が,この作品で初めて歌舞伎の大劇場へ導入したという説が有力。回り舞台に限らず,序幕の大内の刃傷,大詰の淀川水車の仇討は,情景を変えるため大道具を移動させる引道具その他を使った大スペクタクルで,正三はそのために劇場内部の設備を大改造したらしく,その意味でまさに演劇史上画期的な作品であった。回り舞台【渡辺 保】。…
※「引道具」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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