弥富名(読み)やとみみよう

日本歴史地名大系 「弥富名」の解説

弥富名
やとみみよう

益田遠田とおだ町から現那賀郡三隅みすみ町に及ぶ地域に所在した、益田庄を構成する内部の単位所領。もとは藤原(益田)氏が古代苓気つたき郷の一部を新たに開発し、領有を認められて成立したもので、その後益田本郷などとともに九条家に寄進され、益田庄の一部を構成するに至ったと推定される。その後領域の変化に伴い、現遠田町の地域に限定されることとなった。元暦二年(一一八五)六月日の源義経下文并安堵外題案(益田家文書)に、藤原(益田)兼高の所領として弥富とみえる。建仁三年(一二〇三)一二月日の藤原兼季申文案(同文書)では、益田庄を構成する内部の単位所領として、益田郷納田なつた郷・井村いのむら(現三隅町)と並んで弥富名とみえ、貞応二年(一二二三)三月日の石見国惣田数注文においても、(益田)本郷・納田・井村乙吉おとよしと並ぶ、益田庄の内部単位所領として「やとみ 十六丁五反」と記される。これに対し寛元四年(一二四六)一一月三日の鎌倉将軍藤原頼嗣下文(吉川家文書)では、故三隅兼信(沙弥西念)譲状に従って、藤原乙法師丸(永安兼祐)による「益田庄内小弥富」の知行が安堵されている。ここにいう「小弥富」は、藤原(益田)兼季の父兼高が建仁三年以後のある時期に、かつて兼季に与えた弥富名の一部(現三隅町岡見地域)を割いてその弟兼信(三隅氏初代)に譲渡し直し、成立したと考えられ、これ以後の弥富名は「小弥富を除く地域」を意味することとなった。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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