待機老人問題(読み)たいきろうじんもんだい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「待機老人問題」の意味・わかりやすい解説

待機老人問題
たいきろうじんもんだい

介護保険制度要介護者に認定され、特別養護老人ホーム入所を希望しても、入所できない高齢者(待機老人)が増え続けるという社会問題。2013年(平成25)に集計された厚生労働省の調査によると、待機老人の数はおよそ52万2000人で、これは2009年と比較すると、4年で10万人あまり増加している。特別養護老人ホームは全国に約7800か所あり、受け入れ可能な人数は、自治体整備により、4年前よりも7万5000人程度増えている。しかし、急激な高齢化による入所希望者の増加に追いついていないのが実状である。待機老人のうち、要介護認定3の人は12万6000人、4~5の人は21万9000人であった。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、政令指定都市と東京都全体の高齢者人口は2025年には1095万人に達し、特別養護老人ホームが著しく不足するとみられる。

 一方で、厚生労働省が2013年度に行ったアンケート調査によれば、在宅介護サービスを受けている人のうち、家族にかかる負担を減らすことなどを目的に、施設への入所を希望する人が5割近くに上っている。また、特別養護老人ホームに入所を申し込んでいるが、すぐに認められても入るつもりのない人が多数いることもわかった。これが待機老人数の急増一因になっていると同時に、高齢者が在宅での介護に対して複雑な心理状態を抱いていることの表れでもある。

 国は2015年4月から症状の重い人を特別養護老人ホームで受け入れ、要介護認定が2以下の中軽度以下の人に対する在宅ケアを拡充することにより、高齢者ができるだけ自立して生活ができるように法律を改正する方針を示している。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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