特別養護老人ホーム(読み)とくべつようごろうじんほーむ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「特別養護老人ホーム」の意味・わかりやすい解説

特別養護老人ホーム
とくべつようごろうじんほーむ

高齢者福祉の実施施設。老人福祉施設は、老人福祉法(昭和38年法律第133号)の第5条の3に定められており、養護老人ホーム特別養護老人ホーム軽費老人ホーム老人福祉センターデイ・サービスセンター、在宅介護支援センターのほか、ショートステイ関連施設などを含む。このうち特別養護老人ホームは、65歳以上で身体や心に著しい障害があるため常時介護を必要とする人で、居宅では適切な介護を受けることが困難であるときに入所することができる施設である。要介護老人の生活の場として整備されており、デイ・サービス(日帰り介護)やショートステイ(短期入所生活介護)などの機能を備える。

 1989年(平成1)策定ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進10か年戦略)を見直して1994年に策定された新ゴールドプランでは、1999年までに29万人分の特別養護老人ホームを設置することになった。さらに1999年策定のゴールドプラン21では、2004年までに36万人分の介護サービス提供を目標に掲げた。2007年(平成19)の時点で、施設数は約5900、利用者数は約40万人である。1施設の定員は50人以上であるが、山村などの過疎地および都市部では30人以上の規模も認められている。なお、認知症の老人の処遇が適切に確保されるなどのために定員の3割を限度として個室面積加算が認められているが、これからは認知症高齢者のみならず広く入所者の個室利用が認められる方向にある。

 設置主体は、市区町村および都道府県・政令指定都市などの地方公共団体や社会福祉法人であるが、措置の決定は市区町村が行う。常時の介護が必要な高齢者(寝たきり老人や認知症)が対象。経費は介護保険による「介護福祉施設サービス費」の利用者負担分のほか食費・居住費などいわゆるホテルコストが自己負担である。なお施設がユニットケアを導入しているか否かによっても異なるほか入所者の個室であるか否かによって負担費用が変わる。介護保険制度の施行により、介護保険法上の名称は「介護老人福祉施設」となった。

 人口の急速な高齢化に伴う認知症高齢者の増加などから特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)や同じく介護保険法に定められた「介護老人保健施設」や医療法上の「介護療養型医療施設」など入所型の老人にかかわる保健医療福祉への期待が大きい。

[吉川武彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例