御覧ず(読み)ゴランズ

デジタル大辞泉 「御覧ず」の意味・読み・例文・類語

ごらん・ず【御覧ず】

[動サ変]見る」の尊敬語。「見給う」に比べ、敬意が強い。
ご覧になる。ご覧じる。
「昔も―・ぜし道とは見給へつつ」〈かげろふ・中〉
世話をなさる。
「年比も―・じて久しくなりぬ」〈堤・由無し事
召し上がる。
「君、いとねぶたしとて起き給はねば、なほこよひ―・ぜよとて聞こゆれば」〈落窪・一〉

ごろう・ず〔ゴラウず〕【御覧ず】

[動サ変]《「ごらんず」の音変化》
見る」の尊敬語。ごらんになる。ごろうじる。
「帝王コレヲ―・ゼラレテ大キニ驚カセラルル体デ」〈天草本伊曽保・ネテナボ帝王イソポに御不審〉
補助動詞)補助動詞「みる」の尊敬語。
「よくよく按じて―・ぜい」〈杜詩続翠抄〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「御覧ず」の意味・読み・例文・類語

ごらん‐・ず【御覧】

  1. 〘 他動詞 サ行変 〙
  2. [ 一 ] 「見る」の尊敬語。中古から用いられたが、当時は「見給う」に比べて尊敬の度合が強く、帝、后などには、これが用いられた。ごろうず。ごろうじる。
    1. ごらんになる。
      1. [初出の実例]「是を御門御覧じて、いかが帰り給はん空もなくおぼさる」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    2. ( 特に、「見る」が異性を見るの意の場合 ) 異性とお交わりになる。結婚なさる。
      1. [初出の実例]「まだむげにいはきなきほどに侍めれば、たはぶれにても御らんじがたくや」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
    3. ( 特に、「見る」が世話をするの意の場合 ) お世話なさる。
      1. [初出の実例]「見苦しからむことなどは、老いしらへる女房などして、つつまず言ひ教へさせ給ひて、御らむぜよ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)常夏)
    4. 「食う」の尊敬語。召しあがる。おあがりになる。→ごらんじいる
      1. [初出の実例]「あこぎこの餠を箱のふたにをかしう取りなして参りて『これいかで』と言へば、君『いとねぶたし』とて起き給はねば、『なほこよひ御覧ぜよ』とて聞ゆれば」(出典:落窪物語(10C後)一)
  3. [ 二 ] 補助動詞「見る」の尊敬語。ためしに…なさる。
    1. [初出の実例]「かれが五百人もちて候子の中に、ことに自愛を御かくし候て、御覧ぜられ候へ」(出典:曾我物語(南北朝頃)一一)

ごろう‐・ずゴラウ‥【御覧】

  1. 〘 他動詞 サ行変 〙 ( 「ごらんず」の変化した語 )
  2. [ 一 ] ごらんになる。
    1. [初出の実例]「テイワウ コレヲ gorǒjerarete(ゴラウゼラレテ) ヲウキニ ヲドロカセラルル テイデ」(出典:天草本伊曾保(1593)ネテナボ帝王イソホに御不審の条々)
  3. [ 二 ] 補助動詞として用いる。動詞の連用形助詞「て」を添えた形について「…してみる」の意の尊敬語となる。
    1. [初出の実例]「よくよく按じてごらうぜい」(出典:杜詩続翠抄(1439頃)八)

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