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堤中納言物語 つつみちゅうなごんものがたり

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

堤中納言物語
つつみちゅうなごんものがたり

平安時代後期の短編物語集。『花桜折る少将』『このついで』『虫めづる姫君』『ほどほどの懸想』『逢坂越えぬ権中納言』『貝合』『思はぬ方にとまりする少将』『はなだの女御』『はいずみ』『よしなしごと』の 10編と,物語の冒頭と思われる断章とから成る。

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デジタル大辞泉の解説

つつみちゅうなごんものがたり【堤中納言物語】

平安後期の短編物語集。天喜3年(1055)女房小式部作の「逢坂越えぬ権中納言」以外は、作者・成立年代未詳。「花桜折る少将」「虫めづる姫君」「よしなしごと」など10編と一つの断章からなる。

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百科事典マイペディアの解説

堤中納言物語【つつみちゅうなごんものがたり】

平安後期の短編物語集。〈花桜折る少将〉〈虫めづる姫君〉〈貝合せ〉など10編と物語の冒頭らしき断章とから成る。各短編にはそれぞれ特色があり,平安中期から鎌倉初期にかけて,それぞれ別人によって書かれたものを一書にまとめたと考えられている。
→関連項目楠葉牧新猿楽記物語文学

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世界大百科事典 第2版の解説

つつみちゅうなごんものがたり【堤中納言物語】

仮名物語。《花桜折る少将》《このついで》《虫めづる姫君》《ほどほどの懸想(けそう)》《逢坂越えぬ権中納言》《貝合せ》《思はぬ方に泊りする少将》《はなだの女御》《はいずみ》《よしなしごと》の10編の短編と,〈冬ごもる空のけしきに〉に始まる,物語の発端とおぼしき約240字の断章とから成る,総量400字詰め原稿用紙でせいぜい80枚の短編物語集である。多くは王朝貴族男女の恋を主材としたものであるが,《虫めづる姫君》は人工排斥・自然尊重の理を尊び,蝶の根源たる毛虫を愛する姫君の生態と周囲の困惑とを戯画的に描き,《貝合せ》は好色の心で忍び入った貴公子が,本妻腹の姫君との貝合せを控えて孤立無援を嘆く異腹の姫とその女童たちのために,好色の心を捨ててひそかに立派な貝を贈り,観音の助けと随喜する女童たちをかいま見て喜ぶという無償の人間愛を描くなど,同じ王朝貴族世界のことながら題材が珍しい。

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大辞林 第三版の解説

つつみちゅうなごんものがたり【堤中納言物語】

短編物語集。一〇の物語と一の断章より成る。各編は、成立事情を異にし、「逢坂越えぬ権中納言」は1055年の「六条斎院物語合」に提出されたもので女房小式部作。ほかの作者と成立年は未詳。現在の形に結集されたのは鎌倉時代以後。諸編が卓越した技巧でまとめられ、文学史上特異な位置を占める。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

堤中納言物語
つつみちゅうなごんものがたり

平安後期成立の短編物語10編と、物語冒頭部のみの断章一つとよりなる。各物語のうち、「逢坂越(おうさかこ)えぬ権(ごん)中納言」は、陽明文庫蔵20巻本『類聚歌合(るいじゅううたあわせ)』所収の歌合の記載によって、1055年(天喜3)5月3日夜、六条斎院(さいいんばいし)内親王家で催された物語合(あわせ)のおり、宮に仕える小式部(こしきぶ)という女房が提出した物語であることが判明している。しかし、ほかの物語はすべて作者も執筆時期も明らかでないが、内容から判断して、同じころか、それよりやや下るころの成立と考えられる。ただ、これらを現在のような形にまとめた時期と、堤中納言を冠した題名の由来がつまびらかでない。1271年(文永8)成立の『風葉(ふうよう)和歌集』に、10編のうち5編までの和歌が収録されているので、この前後かとする説と、「よしなしごと」一編の奥書に元中(げんちゅう)2年(1385)書写と記す伝本があることから、1390年から1427年(明徳・応永ごろ)とする説などあり、確定しない。編者を二条良基(よしもと)(1320―1388)と擬する説もあるが、根拠が薄弱である。また題名は、堤中納言とよばれた著名な歌人、藤原兼輔(かねすけ)(879?―933)を諸編中の各主人公に付会したとする説や、「逢坂越えぬ権中納言」を冒頭に据えた本がかりにあったとして、その略称「権中納言」が誤記されたとする説、10編を一包みにしておいた際、包紙に「物語、一つつみ」と書いたのが題名となったとする説など、奇抜な説も多いが、要するにまったくわからない。したがって、配列は、現存伝本によって5通りもあり、おそらく10篇(ぺん)10冊本を原形としたために生じたと思われるので、その意図は計りかねるが、通行本の順序により、各編の荒筋を述べる。
〔花桜折る少将〕垣間見(かいまみ)をした姫君を盗み出そうとした主人公が、姫君を案じてきていた祖母の尼君(あまぎみ)を車に乗せてきてしまう失敗譚(たん)
〔このついで〕3人の女房が語り継ぐ構成で、子までなした姫君の歌にひかれて居着くようになった男の話、清水(きよみず)寺で見聞した世を厭(いと)う女の話、東山辺の尼寺で見た若い女の出家した話。
〔虫めづる姫君〕うす気味わるい虫を集め、とくに毛虫を好む姫君は、化粧もせず理屈ばかりこねるので、男たちも閉口した。
〔ほどほどの懸想〕小舎人童(ことねりわらわ)と女童(めのわらわ)、若い男と女房、2人の主人である頭中将(とうのちゅうじょう)と姫君という、階層の異なる男女が織り成す恋の顛末(てんまつ)
〔逢坂越えぬ権中納言〕才気もあり容姿も端正な権中納言が加担した側は、菖蒲(あやめ)の根合(ねあわせ)でもむろん勝ったが、その中納言が想(おも)う姫君は、寝所に忍び込まれながら、朝までついに意に従わなかった。
〔貝あはせ〕母のない姫君を垣間見て同情した蔵人(くろうど)の少将は、姫君が、北の方腹(かたばら)の姫君と争う貝合の劣勢を、ひそかにさまざまなすばらしい貝を贈って勝利に導く。
〔思はぬ方にとまりする少将〕姉妹がそれぞれ、右大将(うだいしょう)の子の少将と右大臣の子の少将とを通わせているうち、手違いから相手を取り違えて契ってしまった。
〔はなだの女御〕宮仕えから里帰りをした姉妹が二十幾人も集まっていると聞き、垣間見に出向いた好き者は、彼女たちがそれぞれの女主人を花に例えて話をしているのを聞いた。彼の誘いの歌にはだれも応じなかった。
〔はいずみ〕男が新しい愛人を迎えるというので、身寄りのない女は家を去ったが、男はあわれを感じて呼び戻した。久しぶりに男が訪れると、愛人は白粉(おしろい)と間違えて掃墨(はいずみ)を顔に塗ってしまう。
〔よしなしごと〕帰依(きえ)する女に、僧侶(そうりょ)が借りたい品といって、奇想天外な物を次々と書き並べた手紙の紹介。
 行き違いあり、どんでん返しあり、珍妙な主人公あり、涙もあるという短編物語集で、中・長編を主とする平安時代物語のなかでは、情的世界より、むしろ機知を重んじた異彩を放つ作品群である。江戸初期をさかのぼる伝本がないので、本文上は問題が多い。[池田利夫]
『松尾聰・寺本直彦校注『日本古典文学大系13 落窪物語・堤中納言物語』(1957・岩波書店) ▽稲賀敬二・久保木哲夫校注・訳『完訳日本の古典27 堤中納言物語・無明草子』(1987・小学館) ▽土岐武治著『堤中納言物語の研究』(1967・風間書房) ▽鈴木一雄著『堤中納言物語序説』(1980・桜楓社)』

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