復顔法(読み)ふくがんほう(その他表記)restoration technique of facial features

改訂新版 世界大百科事典 「復顔法」の意味・わかりやすい解説

復顔法 (ふくがんほう)
restoration technique of facial features

スーパーインポーズ法とともに,個人識別のために行うもので,頭部顔面20数ヵ所の定められた部位の軟部組織の厚さの年齢別平均値にしたがって,粘土性物質を用いて頭蓋骨に肉付けし,生前顔貌を復元する方法。ある特定個人の生前写真はいっさい見ずに,もっぱら統計値だけにしたがって復顔像を作製し,出来上がってから生前写真と比較したり,あるいは関係者に見せて個人識別を行う。日本では復顔法を行った例はあまり多くない。欧州ではかつて,地下室墓地の多数の骨の中に入りまじっていた音楽家バッハの頭蓋骨を判別するために復顔法を行ったところ,肖像画に一致した例が知られている。復顔像作製の材質は,はじめよく湿した粘土を用いて頭蓋骨に形体をつくりあげ,つぎに,これにセッコウあるいはセレシン系物質の混合物を使用することが多い。顔面軟部組織の厚さの計測点において,個人差の比較的少ない部位,正中線上や眼窩がんか)周辺などの皮下脂肪の少ないところでは問題は少ないが,目,鼻,耳など軟部組織だけの部位の処理法はむずかしい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「復顔法」の意味・わかりやすい解説

復顔法
ふくがんほう

白骨死体、高度の腐乱死体などの身元割り出し手段として、腐敗消失した軟部組織のかわりに粘土などの可塑性物質を頭蓋(とうがい)顔面骨に肉づけして生前の顔貌(がんぼう)を立体的に復原、推定する方法。肉づけ法ともいう。基本的には、頭蓋顔面骨上の定点(通常、二十数か所)における被覆軟部組織の厚みの年齢別平均値に従って、各定点にそれぞれの厚みの粘土ブロックを張り付けていく。鼻尖(びせん)部、口唇、眼瞼(がんけん)、耳介、眉毛(びもう)、髪際部などの形状は再現根拠となる絶対的基準がなく、他部との相対的関連性などから形成するため、彫刻家的センスも要求される。したがって、復原に成功するとは限らず、異なる容貌を呈することもある。日本最初の復顔は、法医学者古畑種基(ふるはたたねもと)の依頼を受けて、彫刻家朝倉文夫によって試みられたといわれる。

[小谷淳一]

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世界大百科事典(旧版)内の復顔法の言及

【個人識別】より

スーパーインポーズ法は,死者と思われる人の生前の顔写真と同じ角度で撮影した頭蓋骨写真のネガを重ね合わせて焼付けを行い,頭蓋骨全体の形,眼の位置,鼻,口の位置などが合うかどうかを検査する方法である。これとは別に復顔法(頭蓋肉付法)があり,これは頭部顔面二十数ヵ所の軟部組織の厚さを測定した統計値を用いて,その厚さに発見された頭蓋骨に粘土またはセッコウで肉づけして生前の顔貌を復元する方法である。ある特定個人の生前写真を見ないで,もっぱら統計値だけに従って肉づけし,出来上がってから生前写真と比較したり,遺族等に見せて個人識別を行う。…

※「復顔法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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