改訂新版 世界大百科事典 「心臓性喘息」の意味・わかりやすい解説
心臓性喘息 (しんぞうせいぜんそく)
cardiac asthma
心臓病が原因で気管支痙攣(けいれん)を伴う呼吸困難がその患者にみられる場合に心臓性喘息という。冠動脈疾患,弁膜症,重症不整脈などによって肺鬱血(うつけつ)の急性左心不全症状が発作性に起こると,ときにそれが原因となって自律神経反射を介して喘息発作様の呼吸困難が起こると考えられている。肺野で湿性の水泡音を聴くよりもヒーヒーいう乾性の気管支肺泡音を聴くことが多く,肺浮腫の程度はいろいろみられるものの,肺胞の中にまで滲出液をみることはない。心臓性喘息は慢性心不全患者に睡眠中急に起こるのが特徴的で,まれに日中でも過激な労作を行ったり,精神的興奮によってひき起こされることがある。気管支喘息にかかっている患者が,心臓病をわずらい痙攣性呼吸困難を起こしたりすることもある。したがって心臓性喘息か気管支喘息かの鑑別はむずかしいが,明らかな心臓病が指摘されていて気管支喘息の既往がなければ鑑別診断がつく。
執筆者:柳沼 淑夫
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