忌部(読み)いんべ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「忌部」の意味・わかりやすい解説

忌部
いんべ

大和(やまと)王権下の部民の一つ。忌部氏の私有民としての部曲(かきべ)と、その管理下にある祭祀(さいし)関係の品部(しなべ)の2類型が考えられる。品部としての忌部は、忌部氏が大嘗祭(だいじょうさい)、大殿祭(おおとのほがい)、御門祭(みかどまつり)などの中央祭祀を担当するところから、中央の求めに応じて、山材貢納、造殿作業、祭具製作などを任務とした。忌部の分布は、残存史料によって安房(あわ)、紀伊(きい)、讃岐(さぬき)、阿波(あわ)、出雲(いずも)と広がっていることが確認される。そのうち、紀伊の忌部は伊勢(いせ)神宮との関連も想定されている。

[関 和彦]

『平野邦雄著『大化前代社会組織の研究』(1969・吉川弘文館)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「忌部」の解説

忌部
いんべ

古代の部民。のちには斎部とも記す。諸国に分布したが,紀伊の忌部は中央の忌部氏に直属し,阿波・讃岐の忌部は国造を介して大和朝廷の官司に所属したという。律令時代には忌部姓の人々や忌部郷が阿波・越前・紀伊・出雲・上総国に分布。斎部広成の「古語拾遺」によると,彼らは天皇のため正殿をたて,鏡・玉・矛・盾・木綿(ゆう)・麻布・竿(ほこざお)を貢し,大嘗祭(だいじょうさい)に奉仕した。「延喜式」によると,忌部は践祚(せんそ)大嘗祭で重要な役割をはたした。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

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