思兼神(読み)おもいかねのかみ

精選版 日本国語大辞典 「思兼神」の意味・読み・例文・類語

おもいかね‐の‐かみおもひかね‥【思兼神】

  1. 記紀に見える神。高皇産霊尊(たかみむすひのみこと)の子。思慮の神。天の岩屋戸に隠れた天照大神を慰め誘い出すためのはかりごとを行なった。天孫降臨の際、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に従って天降った。八意(やこころ)思兼神。

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改訂新版 世界大百科事典 「思兼神」の意味・わかりやすい解説

思兼神 (おもいかねのかみ)

記紀神話に登場する神の名。《古事記》では思金神と記す。思慮を兼ねそなえ,事を議(はか)ることを役目とする神の意で,《日本書紀》には〈深謀遠慮〉〈思慮の智〉ありとある。天(あま)の岩屋戸の神話では,この神のおもんぱかりにもとづくさまざまな策によって,岩屋戸にこもった天照大神(あまてらすおおかみ)を引き出すことに成功した。また国譲り神話では,アマテラスの諮問に応じて献策する。さらにアマテラスの御魂代(みたましろ)なる鏡をともない天孫に従って天下り,〈前の事を取り持ちて政(まつりごと)〉することになった。わかりにくい文だが,伊勢神宮のアマテラス祭祀をとりしきる意かと思われる。この神は高皇産霊(たかみむすひの)尊の子とある。タカミムスヒは,天地の初めに成り出で,天孫降臨その他の大事をアマテラスとともにとりしきる神で,《日本書紀》では皇祖とすら称されている。両神父子とされているのは,オモイカネのおもんぱかりの背後に,タカミムスヒの存在が働いていることを意味するものであろう。
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朝日日本歴史人物事典 「思兼神」の解説

思兼神

日本神話に登場する神。多くの思慮を兼ね備えた神,深く思慮する神の意。『日本書紀』に,高皇産霊尊の子とする伝承がある。『古事記』では思金神,常世思金神とあり,『先代旧事本紀』では八意思金神,八意思兼神と書かれる。また『日本書紀』には,石窟に籠もった天照大神を外へおびき出すためにこの神が「深く謀り,遠く慮りて」対策を講じたと記され,この神は「思慮の智有」る神だとの説明がある。天孫の瓊瓊杵命が降臨する前の話には,地上へ派遣すべき神を次々と選出して国譲りを成功させ,また実際に降臨にも随伴したとある。天手力雄神(アメノタヂカラオノカミ)と一緒に伝承中に登場することが少なくなく,腕力を持つ神と知力を有する神という形で,アメノタヂカラオとペアをなす神だと考えられていた節がある。

(佐佐木隆)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「思兼神」の解説

思兼神 おもいかねのかみ

記・紀にみえる神。
高皇産霊(たかみむすびの)神の子とされる。はかりごとをめぐらし,献策する。天の岩戸,国譲り,天孫降臨などの神話で重要な役目をはたす。「古事記」では思金神とかく。

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