天孫降臨(読み)テンソンコウリン

デジタル大辞泉 「天孫降臨」の意味・読み・例文・類語

てんそん‐こうりん〔‐カウリン〕【天孫降臨】

日本神話で、瓊瓊杵尊ににぎのみことが、天照大神あまてらすおおみかみの命を受けて葦原の中つ国を治めるために高天原たかまがはらから日向ひゅうが国の高千穂峰天降あまくだったこと。

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精選版 日本国語大辞典 「天孫降臨」の意味・読み・例文・類語

てんそん‐こうりん‥カウリン【天孫降臨】

  1. 天照大神の孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が大神の命を受けて、葦原中国(あしはらのなかつくに)を治めるために、高天原(たかまのはら)から筑紫(つくし)日向(ひゅうが)高千穂(たかちほ)峰に降りて来たこと。
    1. [初出の実例]「稲田姫の生て、天孫降臨までは五十五万年ぞ」(出典:日本書紀兼倶抄(1481))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天孫降臨」の意味・わかりやすい解説

天孫降臨
てんそんこうりん

政治神話の性格をもつ記紀神話のなかで、もっとも高潮した部分。大国主命(おおくにぬしのみこと)との国譲り交渉の妥結後、葦原中国(あしはらのなかつくに)を治めるために高天原(たかまがはら)から天孫瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が初めて地上に降り立つこの神話は、豊饒祭(ほうじょうさい)を即位の支配者儀礼に仕立(したて)直した大嘗祭(だいじょうさい)と補完関係にあり、したがって皇室の要請に有力氏族の要求が加わって、神話のなかでもいちばん多彩な異伝を残している。現在の研究では、『日本書紀』本文の、司令神を高皇産霊神(たかみむすびのかみ)とし、嬰児(えいじ)の瓊瓊杵尊が真床追衾(まとこおふふすま)で覆われて、日向(ひむか)の襲(そ)の高千穂峰(たかちほのみね)に降(くだ)るとする伝承が原形であり、また司令神に天照大神(あまてらすおおみかみ)を加え、邇邇杵命(ににぎのみこと)が五伴緒(いつのとものお)をはじめとする諸神を連れ従え、三種の神器や神鏡、統治に関する神勅を与えられて天降(あまくだ)るという『古事記』の内容を、もっとも発達を遂げた伝承としている。のちに降臨地の日向の高千穂峰は、その所在を鹿児島県と宮崎県で争われるが、原意は、豊饒の穀霊が生成の霊格に司令されて、日に向かう聖地の豊かな稲穂の上に降臨する意であった。

 この天孫降臨の神話は、朝鮮半島の大賀洛(おおから)国の農耕祭を背景とした王者出現の神話(三国遺事(さんごくいじ))と類似するが、そこでは、春禊(しゅんけい)の日、長老たちの奉迎のなかを神霊の声のままに紅布に包まれ、金卵の形で聖なる亀峰(きほう)に天降る首露王(しゅろおう)(山の神、同時に田の神)の出現が語られている。したがってこの神話は、山岳的他界の観念を素地として、朝鮮半島から日本に受容された新しい形の神話である可能性が高い。この推定は、記紀が垂直的神降臨の記述のなかでなお、神が海上の神座に出現し、国を求めつつ、笠狭崎(かささのみさき)の波の穂に屋を建てて機(はた)織る乙女に迎えられるという水平的神出現の記述を残していることにより強められる。また『古事記』そのほかの伝承では、降臨予定であった父の天忍穂耳尊(あめのおしほみみのみこと)にかわり、出誕直後の邇邇杵命が降臨するが、その場合同時に司令神として天照大神の登場がある。これは、高皇産霊神→邇邇杵命の形に、天照大神→天忍穂耳尊の伝承を挿入するため案出された発想と考えられる。

[吉井 巖]

『三品彰英著『天孫降臨神話異伝考』(『建国神話の諸問題』所収・1971・平凡社)』『松前健著『大嘗祭と記紀神話』(『古代伝承と宮廷祭祀』所収・1974・塙書房)』

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百科事典マイペディア 「天孫降臨」の意味・わかりやすい解説

天孫降臨【てんそんこうりん】

天皇家の由来と古代国家起源に関する神話。6―7世紀の成立とされる。記紀によれば,天照大神が孫の瓊瓊杵(ににぎ)尊に神宝(三種の神器)を与え,天壌無窮の神勅を発し,天児屋(あめのこやね)命などの神々を供に高天原から日向(ひむか)の高千穂峰に降臨させたという。天皇家の絶対的神聖化を意図する神話で,天壌無窮の神勅は敗戦まで日本の国体の基礎をなすものとされていた。
→関連項目出雲神話国津神高皇産霊尊手力雄神真床追衾

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「天孫降臨」の意味・わかりやすい解説

天孫降臨
てんそんこうりん

記紀神話の一つ。アマテラスオオミカミの命を受けて,アマテラスオオミカミの孫であるニニギノミコトが,高天原から日向国の高千穂峰に天降ったことをいう。その際,アマテラスオオミカミは天壌無窮の神勅,三種の神器を授け,アメノコヤネノミコトら五部神を侍せしめた。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「天孫降臨」の解説

てんそんこうりん【天孫降臨】

宮崎の芋焼酎。酒名は、地元・高千穂に伝わる「天孫降臨」神話にちなみ命名。減圧蒸留による華やかな香りや軽快な味わいを追求している。原料はコガネセンガン、米麹。アルコール度数20%、25%。蔵元の「神楽酒造」は昭和29年(1954)創業。所在地は西臼杵郡高千穂町岩戸。

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旺文社日本史事典 三訂版 「天孫降臨」の解説

天孫降臨
てんそんこうりん

記紀にみえる日本神話の重要な一節
皇祖神天照大神 (あまてらすおおみかみ) がその孫瓊瓊杵尊 (ににぎのみこと) に三種の神器と国土統治の無窮を説いた神勅を与えて,国土統治のため高天原 (たかまがはら) から日向国高千穂峰に降臨させたという神話。

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デジタル大辞泉プラス 「天孫降臨」の解説

天孫降臨

宮崎県、神楽酒造株式会社が製造・販売する芋焼酎。白麹仕込みと黒麹仕込みがある。

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世界大百科事典(旧版)内の天孫降臨の言及

【瓊瓊杵尊】より

…いわゆる〈天孫〉の誕生で,これがニニギノミコトである。そこでアマテラスはこのニニギを天降(あまくだ)らせることになる(天孫降臨神話)。《日本書紀》の一書では,ニニギはオシホミミが天降る途中の天空で生まれ,オシホミミに代わって降ったとある。…

※「天孫降臨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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