思想犯(読み)シソウハン

デジタル大辞泉 「思想犯」の意味・読み・例文・類語

しそう‐はん〔シサウ‐〕【思想犯】

国家体制に相反する思想に基づく犯罪。また、その犯人。特に、もと治安維持法に触れた犯罪、およびその犯罪者をいう。

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精選版 日本国語大辞典 「思想犯」の意味・読み・例文・類語

しそう‐はんシサウ‥【思想犯】

  1. 〘 名詞 〙 思想上の犯罪。特に、第二次大戦以前の治安維持法に触れた犯罪。また、その罪に問われた者。
    1. [初出の実例]「保護司の職務は思想犯の保護観察に経験を有する者〈略〉に対し司法大臣之を嘱託することを得」(出典:保護観察所官制(1936)五条(法令全書))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「思想犯」の意味・わかりやすい解説

思想犯
しそうはん

現国家体制に批判的ないしこれに反対する思想に基づく犯罪。政治犯や確信犯も類似した概念。国家は、特定の国家体制(または政治体制)を維持・強化するため、警察などの権力機構内部に思想犯を対象とする組織を設け、前記のような思想やこれに基づく社会運動を取り締まり、処罰する傾向をもつ。戦前のわが国では、治安維持法を頂点とするさまざまな治安法により、社会主義運動や労働運動はもとより、反戦運動、さらには自由主義的運動さえも、「国体」(天皇制)の変革私有財産制度否認を目的とするという理由で、特別高等警察(特高警察)などにより厳しく取り締まられ、処罰された。そして、敗戦に伴うポツダム宣言受諾により、治安維持法や特高警察は廃止されたが、まもなく「新特高」とよばれる警備公安警察の組織が新設され、警察法第2条1項の「公共の安全と秩序の維持」を法的根拠として警察実務における「警備犯罪」(ここにいう思想犯を含む)を対象に幅広く情報収集活動を展開するとともに、共産主義運動、労働運動その他各種の社会運動に伴う不法事案の予防や鎮圧にあたっている。

[名和鐵郎]

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