日本大百科全書(ニッポニカ) 「恒常所得仮説」の意味・わかりやすい解説
恒常所得仮説
こうじょうしょとくかせつ
permanent income hypothesis
M・フリードマンが、長期および短期の平均消費性向の特徴について統一的な説明を行った際に用いた仮説。彼は、現実の所得を、比較的安定していて長期的に稼得可能な所得と、一時的な所得とに分け、前者を恒常所得、後者を変動所得とし、消費は恒常所得に依存するとした。いま、所得をY、恒常所得をYP、変動所得をYT、消費をCとすると、
C=k・YP (1)
で示される。ただしkは比例定数である。所得Yで(1)式の両辺を割れば、平均消費性向C/Yについて、
C/Y=k・Yp/Y (2)
が得られる。ただし、Y=YP+YTである。
(2)式から明らかなように、平均消費性向Cは所得全体に占める恒常所得の割合により変化する。短期的にみた場合には、景気の上昇局面では残業などの変動所得が大きくなるので平均消費性向は低下し、景気の下降局面では逆に上昇する。長期的にみた場合には、時の経過とともに所得が上昇していても、変動所得と恒常所得の割合に変化がない限り平均消費性向は安定している。また、高所得者層ほど配当などの変動所得の割合が大きくなるので、平均消費性向は低くなっていることがわかる。
[畑中康一]