日本大百科全書(ニッポニカ) 「感染性胃腸炎」の意味・わかりやすい解説
感染性胃腸炎
かんせんせいいちょうえん
ウイルスや細菌などが原因となる嘔吐(おうと)や下痢を主症状とする感染症。流行性嘔吐下痢症ともよばれる。ほかの症状として急におこる腹痛や脱水、ときに発熱を伴うが、症状の程度および経緯は個人によってさまざまである。ウイルスによる感染が多く、ロタウイルス、ノロウイルスほか、エンテロウイルス、アデノウイルス、サポウイルスによるものがあり、数日の潜伏期をおいて発症することが多い。ロタウイルスによる感染では白色便がみられることがある。秋口から冬場にかけて流行することが多い。乳幼児施設や高齢者施設など人が集まる場所で集団感染することがしばしばあり、乳幼児が感染した場合は進行が早い。
2012年(平成24)にノロウイルス感染症が世界的な流行をみた。汚染された生ガキなどの二枚貝をはじめとする食品などから経口感染することが多く、また感染した患者の糞便(ふんべん)や吐瀉(としゃ)物を介して二次的に感染し、ときに重症化して死亡する例もある。ロタウイルスなどはヒト以外の動物にも感染し、サポウイルスやノロウイルスはヒト以外の動物には感染しない。症状や所見から感染性胃腸炎が疑われる場合、あるいは感染性胃腸炎患者と診断された場合、また検案した死体に感染性胃腸炎が疑われる場合は、保健所に届け出る義務がある。特別な治療法はなく対症療法がとられ、手洗いやうがいの励行がすすめられる。
[編集部]