精選版 日本国語大辞典 「懸け」の意味・読み・例文・類語
かけ【懸・掛・賭】
- [ 1 ] ( 動詞「かける(懸)」の連用形の名詞化 )
- ① 言葉に出して言うこと。また、その言葉。
- ② 物を留めたりひっかけたりする部品、ひも、道具など。
- [初出の実例]「懸もはづさぬ車より、飛下ける程に」(出典:太平記(14C後)二三)
- ③ 近世の上流婦人の上着。うちかけ。
- [初出の実例]「『お規式(ぎしき)の時にはお下髪で、お眉を遊して、地黒や地白や時々のお襠(カケ)を召て』『お襠(カケ)とはへ』『お襠(うちかけ)さ』」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三)
- ④ 帯の部分の名。帯をしめ始めるとき、腰に回して短いほうの端をいう。→垂(た)れ。
- [初出の実例]「君江は男の胸の上に抱かれたまま、羽織の下に片手を廻し、帯の掛けを抜いて引き出したので」(出典:つゆのあとさき(1931)〈永井荷風〉三)
- ⑤ 金銭の支払いを後でする約束で行なう売買。かけ売り。かけ買い。
- [初出の実例]「棚店に掛(カケ)はかたくせぬ事なれども」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)四)
- ⑥ 支払う約束で、まだ払われていない金。かけ金。
- [初出の実例]「薬屋方かけ今日迄は悉済了」(出典:多聞院日記‐天正九年(1581)六月六日)
- 「よっぽどあいつにかけも有。丸はだかにして成共、かけを取て」(出典:浄瑠璃・丹波与作待夜の小室節(1707頃)中)
- ⑦ かけ売りの代金を取り立てること。また、その人。かけこい。かけとり。
- [初出の実例]「せむる懸やらふ声には鬼もなし〈正休〉」(出典:俳諧・俳諧三部抄(1677)上)
- ⑧ 前々からの予定や計略。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- [初出の実例]「いやなる物〈略〉かけの有夜のなが客人」(出典:仮名草子・犬枕(1606頃))
- ⑨ 相撲の手で、足を相手の足にからませて倒すわざの総称。内がけ、外がけ、切り返しなどの類。
- [初出の実例]「投・繋(カケ)・捻・(そり)、啻だ力を闘はすならず、知を闘し術を闘す」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)初)
- ⑩ 相撲で、引き分けになること。勝負なし。あずかり。
- [初出の実例]「角力は掛けになった上、明日の興行にも拘はる仕儀」(出典:歌舞伎・極附幡随長兵衛(1881)序幕)
- ⑪ 柔道などで、相手を投げるために技を掛けること。
- ⑫ 囲碁で、高い位の石から低い位の相手の石に対して高圧する手段。
- ⑬ 「かけそば(掛蕎麦)」「かけうどん(掛饂飩)」の略。
- [初出の実例]「がっかり・楠屋で掛ケを喰って帰り」(出典:雑俳・歌羅衣(1834‐44)三)
- ⑭ 「かけぶとん(掛蒲団)」の略。
- [初出の実例]「敷きのやうに固い掛けなのだが」(出典:温泉宿(1929‐30)〈川端康成〉秋深き)
- ⑮ =かけじ(懸路)〔日葡辞書(1603‐04)〕
- ⑯ ( 賭 )
- (イ) 互いに金銭や物品を出し合って、勝ったほうがそれを手に入れるという約束で勝負を争うこと。かけごと。
- [初出の実例]「大擲は大がけをして百貫とも二百貫ともかけをして打たぞ」(出典:玉塵抄(1563)一七)
- (ロ) 結果を運にまかせてする行為。成功する可能性の少ない危険な行為。「かけに出る」
- (イ) 互いに金銭や物品を出し合って、勝ったほうがそれを手に入れるという約束で勝負を争うこと。かけごと。
- ⑰ ( [フランス語] pari の訳語 ) 実存主義哲学の用語。自己の実存意識の中で、自分の現状を十分に認識した上で、未来のあるべき自分自身になろうと決意すること。
- [ 2 ] 〘 接尾語 〙
- ① 数量を表わす語に添えて、一人で背負える程度の物を数えるのに用いる。
- [初出の実例]「山籠にとらせ給ふべき物とて、御衣櫃ひとかけに、檀ひとかけ持たせ給ふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
- ② 数量を表わす語に添えて、細長いものを数えるのに用いる。
- [初出の実例]「法印同罷候、中御門御亭へ馬手綱、二懸、弁に一懸遣候」(出典:言継卿記‐大永七年(1527)四月一八日)
- ③ 鐙(あぶみ)、鞦(しりがい)などの一対、また、魚、特に二匹の鯛(たい)を向かい合わせにした、掛鯛(かけだい)を数えるのに用いる。
- [初出の実例]「一懸 ひとカケ 鯛」(出典:伊京集(室町))
- ④ ( 動詞の連用形に付けて )
- ① 数量を表わす語に添えて、一人で背負える程度の物を数えるのに用いる。