成長の限界(読み)せいちょうのげんかい

百科事典マイペディア 「成長の限界」の意味・わかりやすい解説

成長の限界【せいちょうのげんかい】

1972年に国際的な研究・提言機関〈ローマ・クラブ〉が発表した報告書。将来も現在(1972年)のような人口の爆発的増加と経済成長が続いた場合には,人口,食糧生産,資源,環境などの問題を総合的に検討すると,100年以内に地球の成長は限界に達するというのがその内容。この将来予測を委嘱されたマサチューセッツ工科大学の若手学者は,人口,食糧生産,資本,再生不能資源,環境汚染の五つの変数がそれぞれ時間の経過とともに相関しながら変化していくさまを追究し,有限な地球の資源,食糧生産,環境と幾何級数的な成長とは矛盾することを証明した。この将来予測は同年のストックホルム会議国連人間環境会議)へ向けて地球環境問題への取組みの重要性を広く知らせる啓発的な役割をした。
→関連項目エネルギー資源

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「成長の限界」の意味・わかりやすい解説

成長の限界
せいちょうのげんかい
The Limits to Growth

ローマ・クラブ委託により,マサチューセッツ工科大学の D.H.メドウズ,D.L.メドウズらが行なった「人類危機に関するプロジェクト」のための研究報告。 1972年に発表されたこの報告書は,システム・ダイナミクスの手法を用いて全地球的システムのモデル化を試み,1960年代のような人口増加率と経済成長率が今後も持続するとすれば,食糧不足,資源の枯渇,汚染の増大によって地球と人類は 100年以内,おそらく 50年以内に成長の限界に達し,人口と工業力の制御不可能な減少という破滅的結果が発生せざるをえないと警告し,高度成長を享受していた先進諸国の人々の根本的な反省への重大な契機となった。

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世界大百科事典(旧版)内の成長の限界の言及

【エネルギー資源】より

… 1960年代を通じての世界経済の高度成長は,こうしたエネルギー需給迫に関する歴史的予測を,現実的な課題として再認識させることになった。そのきっかけとなったのは,ローマ・クラブの報告書《成長の限界》(1972)である。この報告は,エネルギーに限らず,多くの資源の需要は等比級数的に伸びるのに対して,資源の量には絶対的限界がある,として,人類の成長には限界が迫っている,とした。…

【人口】より

…72年の国連人間環境会議においては,人口の増加と人間の生存環境の悪化がとりあげられた。また,同年には,ローマ・クラブの委嘱によるD.L.メドウズの《成長の限界》が発表され,世界人口の増加と高度経済成長の持続がもたらす人類の破局の危機が警告された。次いで,74年は国連の世界人口年として,世界中の国々が人口問題についての関心と対策の緊急性についての国民の認識を高揚するための地球規模的な努力が展開された。…

【生活の質】より

…このように〈より多く〉よりも〈より良く〉という価値観として,世界的には1965年ころからクオリティ・オブ・ライフ(QOLと略称)という言葉が使われはじめ,日本でも70年から経済企画庁が社会指標として〈生活の質〉の指標化にとりくんでいる。72年ローマ・クラブ報告書《成長の限界》の中で使われて以来,広く使われるようになった。生活の質を個人の意識の問題として満足感・充足感として定義する見解,個人生活をとりかこむ社会的環境の問題として暮しやすさとして定義する見解,その両者を統合する見解があり,社会指標として使われる場合は第3の見解がとられている。…

【ローマ・クラブ】より

…ローマ・クラブは発足の当初から〈人類の危機プロジェクト〉と称して,世界に起こっている種々の問題を個別ではなく,相互に密接な関連をもつ〈問題群〉としてとらえ,その総合的な解決を世界の指導者や一般大衆に警告,助言することを目的としている。このアピールにこたえて行われた研究の最初の成果が〈現在のような幾何級数的な世界人口と経済の成長がこのまま続けば,来世紀には破滅的な事態に至る可能性が強く,物質的な意味でのゼロ成長を実現する必要がある〉と警告する《成長の限界》(1972)である。引き続いて《転機に立つ人間社会》(1974),《限界なき学習》(1979)などの報告書が出されている。…

※「成長の限界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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