ローマクラブ(読み)ろーまくらぶ

デジタル大辞泉 「ローマクラブ」の意味・読み・例文・類語

ローマ‐クラブ

The Club of Rome》1968年、ローマで初会合を開いて発足した国際的民間組織。各国の知識人財界人によって構成され、天然資源枯渇化・環境汚染人口増加などの諸問題を研究・提言。研究報告書「成長の限界」「国際秩序の再編成」などを発表している。

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精選版 日本国語大辞典 「ローマクラブ」の意味・読み・例文・類語

ローマ‐クラブ【ローマ倶楽部】

  1. ( [英語] The Club of Rome ) 国際的な未来研究団体。一九六八年四月、西欧諸国、日本などの学者、政財界人がローマに集まって結成。科学技術の進歩とそれに伴う人類の危機をシステム分析して、具体的な対策をたてることを目的とし、報告書を多数刊行。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ローマクラブ」の意味・わかりやすい解説

ローマ・クラブ
ろーまくらぶ

科学者、経済学者、教育者、経営者などで構成されたスイス法人の民間組織。産業発展によって病み始めたこのかけがえのない地球で、はたして人類はわれわれの孫の世代まで生存できるのかといった危機感から、複雑に絡んだ「地球問題症候群」の分析に取り組む非政府系の研究団体である。ローマ・クラブの名称は、創設者で、オリベッティ社のA・ペッチェイAurelio Peccei(1908―84)を中心に、最初の会合が1968年4月イタリア・ローマで開かれたことに由来する。70年4月スイス法人として認可

 ローマ・クラブが世界的な存在として認知されたのは、第1回の報告書『成長の限界』(1972)の発表による。その内容は、マサチューセッツ工科大学のメドゥズDennis Meadows(1942― )の研究グループが、システム・ダイナミックス(インダストリアル・ダイナミックス)の手法を用いて、全地球的システムのコンピュータ・モデル化を行い、地球の将来を約100年間にわたって推定した結果の報告書で、全地球の人口増加による食糧不足、産業による環境汚染や天然資源の枯渇などによって、現在のままでの経済成長は不可能であり、成長は限界点に達する、という衝撃的なものであった。1970年代までのバラ色の経済成長論に対して、「ゼロ成長」「持続可能な経済成長」といった新しい考え方が提示された意義は大であった。続いて、第2回の報告書『転機に立つ人間社会』(1974)、第3回『国際秩序の再編成』(1976)、第4回『浪費の時代を超えて』(1976)、第5回『人類の目標』(1980)、第6回『限界なき学習』(1980)、第7回『効率型社会への道程図』、第8回『マイクロ電子技術と社会』(1983)などが次々に出版された。また世界でローマ・クラブに直接、間接にかかわった人々の著書も数多くあり、その影響力は大きい。それは、ローマ・クラブが「持続的成長」「宇宙船地球号」「地球社会」「地球環境」「自然保護」「かけがえのない地球」「地球的に考え、地域的に活動する」など次々に新しい考え方を打ち出してきたことによる。

 日本では、創設以来、外務大臣経験者の大来佐武郎(おおきたさぶろう)ほか10名が参加した。ローマ・クラブの総会は東京で2回、ローマ・クラブ地域会議が福岡市で1回、ローマ・クラブの若者中心の「フォーラム・ヒューマナム」が福岡市で1回開催された。1984年、会長ペッチェイの死後、世界的研究活動が減少し、2000年にはヨーロッパで若干の活動がみられるだけになったが、ローマ・クラブが提唱した数々の具体案が、各国で具体的政策として実行されていることから、ローマ・クラブの先見性は高く評価されている。

[伊藤重行]

『D・H・メドウズ他著、大来佐武郎監訳『成長の限界』(1972・ダイヤモンド社)』『M・メサロヴィック著、大来佐武郎監訳『転機に立つ人間社会』(1975・ダイヤモンド社)』『Y・ティンバーゲン著、茅陽一監訳『国際秩序の再編成』(1977・ダイヤモンド社)』『D・ガボール、U・コロンボ著、鈴木胖監訳『浪費の時代を超えて』(1979・ダイヤモンド社)』『E・ラズロー著、大来佐武郎監訳『人類の目標』(1980・ダイヤモンド社)』『J・W・ボトキン他著、大来佐武郎監訳『限界なき学習』(1980・ダイヤモンド社)』『ボーダン・ハウリリシン著、大来佐武郎監訳『効率型社会への道程図』(1982・ダイヤモンド社)』『G・フリードリヒ、A・シャフ著、森口繁一監訳『マイクロ電子技術と社会』(1983・ダイヤモンド社)』『A・ペッチェイ著、大来佐武郎監訳『未来のための100ページ』(1981・読売新聞社)』『A・ペッチェイ著、大来佐武郎監訳『人類の使命』(1981・ダイヤモンド社)』『D・H・メドウズ、D・L・メドウズ、J・ランダース著、松橋隆治・村井昌子訳『限界を超えて』(1992・ダイヤモンド社)』『ローマ・クラブ福岡会議イン九州実行委員会編『地球環境と地域行動――ローマ・クラブ福岡会議イン九州の記録』(1993・清文社)』『鳩山由起夫著『「成長の限界」に学ぶ』(2000・小学館)』

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改訂新版 世界大百科事典 「ローマクラブ」の意味・わかりやすい解説

ローマ・クラブ
Club of Rome

イタリアの著名な実業家であり知識人であるペッチェイAurelio Peccei(1908-84)を中心に〈地球の有限性〉という共通の問題意識をもつ世界各国の知識人が集まって結成した任意の団体。1968年にローマで初会合を開いたことから,この名で呼ばれる。クラブメンバーは最大100人と決められているが,97年6月現在で正会員は37ヵ国80人,名誉会員,準会員を含めると50ヵ国148人が参加している。メンバー構成は,科学者,経済学者,プランナー,教育者,経営者など多彩であり,日本からも正会員3名,名誉会員2名が参加している。ローマ・クラブは発足の当初から〈人類の危機プロジェクト〉と称して,世界に起こっている種々の問題を個別ではなく,相互に密接な関連をもつ〈問題群〉としてとらえ,その総合的な解決を世界の指導者や一般大衆に警告,助言することを目的としている。このアピールにこたえて行われた研究の最初の成果が〈現在のような幾何級数的な世界人口と経済の成長がこのまま続けば,来世紀には破滅的な事態に至る可能性が強く,物質的な意味でのゼロ成長を実現する必要がある〉と警告する《成長の限界》(1972)である。引き続いて《転機に立つ人間社会》(1974),《限界なき学習》(1979)などの報告書が出されている。また,原則として毎年1回ずつ各国持回りで大会を開いており,大会最後に次回開催地を決定している。東京でも73年に統一テーマ〈新しい世界像を求めて〉,82年には統一テーマ〈21世紀への地球的課題と人類の選択〉で2度にわたり,また92年は福岡で統一テーマ〈地球環境と地域行動〉のもとに大会が開催されている。日本においては社団法人〈科学技術と経済の会〉が事務局となっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ローマクラブ」の意味・わかりやすい解説

ローマ・クラブ
Rome, Club of

1969年4月世界的な公害問題,人口爆発,軍事的破壊力の脅威などの人類の危機の接近に対し,可能な解決策を追求するため,イタリアの A.ペッチェイを中心に世界各国の科学者,経済学者,経営者などにより設立された民間組織。最初の会合を 68年4月にローマで開催したことにちなみ,この名がつけられた。本部はイタリア。なおローマ・クラブは「人類の危機に関するプロジェクト」の第1段階として人類が将来直面する危機の諸要因とその相互作用を全体として把握できる全地球的なモデルを MIT (マサチューセッツ工科大学) に依頼して完成し,「成長の限界」と題するレポートを 72年初めに発表した。以後も数々のレポートが提出された。 82年 10月の東京大会では,人口,資源,エネルギー,食糧のほか発展途上国の森林破壊,軍縮,教育問題について討議された。

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百科事典マイペディア 「ローマクラブ」の意味・わかりやすい解説

ローマ・クラブ

イタリアの実業家A.ペッチェイの提唱で1968年に結成,1970年正式に発足した地球の未来に関する民間研究団体。英語ではClub of Rome。人類の当面する危機を世界的規模で研究,その成果を発表し政策的提言をも行う。実業家,経済学者などの民間人で構成。日本にも支部委員会がある。1972年発表の報告書《成長の限界》は世界的に注目された。
→関連項目成長の限界

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世界大百科事典(旧版)内のローマクラブの言及

【生活の質】より

…このように〈より多く〉よりも〈より良く〉という価値観として,世界的には1965年ころからクオリティ・オブ・ライフ(QOLと略称)という言葉が使われはじめ,日本でも70年から経済企画庁が社会指標として〈生活の質〉の指標化にとりくんでいる。72年ローマ・クラブ報告書《成長の限界》の中で使われて以来,広く使われるようになった。生活の質を個人の意識の問題として満足感・充足感として定義する見解,個人生活をとりかこむ社会的環境の問題として暮しやすさとして定義する見解,その両者を統合する見解があり,社会指標として使われる場合は第3の見解がとられている。…

【世界秩序】より

…これには大きくいって2種類ある。一つは,未来の世界システムがどうなるか予測を行うものであり,たとえばローマ・クラブの最初の報告《成長の限界》(1972)は,このような色合いが強い。もう一つは,望ましい未来の世界秩序を選択しようとするものである。…

※「ローマクラブ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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