扇屋(読み)おうぎや

精選版 日本国語大辞典 「扇屋」の意味・読み・例文・類語

おうぎ‐や あふぎ‥【扇屋】

[1] 〘名〙 扇を作る家、または売る家。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※仮名草子・都風俗鑑(1681)二「とりわき女のあきなふは、あふぎや、おしろいや、糸や也」
[2]
[一] 延宝・天和(一六七三‐八四)のころの、大坂新町遊郭の著名な揚屋の名。楼主は扇屋四郎兵衛。俳号扇風と称した。
[二] 江戸新吉原、江戸町にあった著名な妓楼の名。中国で扇を五明と称したところから、五明楼ともいった。墨河(ぼくが)の俳号をもつ楼主宇右衛門は十八大通の一人として名声があった。
[三] 江戸王子の稲荷神社前(北区王子一丁目)にあった料亭海老屋とともに知られた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「扇屋」の意味・わかりやすい解説

扇屋
おうぎや

扇を生産する職人、およびそれを販売する店。扇(扇子(せんす))は、中国のものから日本的に独創され、地紙と骨竹からつくられた生活用具で、11世紀には実用化され、13世紀にかけては中国へも輸出された。檜(ひのき)製の檜扇(ひおうぎ)、竹を骨として地紙を貼(は)った蝙蝠(かわほり)(夏扇)があったが、地紙、骨竹のものが主となってきた。その普及に伴って技法的にも進歩し、骨を紙の中へ入れる中付(なかづけ)という技法が始まり、地紙の折り方もくふうされて末広(すえひろ)が生まれた。骨の数は古くは5本、室町時代では12本である。末広の成立は15世紀のことで、同時にその職人も独立して、扇売りや扇屋が京の町に居職(いじょく)として店をもち、製作と販売を兼ねていた。17世紀には、ほかの城下町にも成立し、地紙師、絵師、骨師、要(かなめ)師というように分業化していったが、多くは家族労働によっていた。またそのころ、実用的、庶民的なものとして団扇(うちわ)を生産する団扇師が分化してきた。

遠藤元男

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「扇屋」の解説

扇屋
(通称)
おうぎや

歌舞伎浄瑠璃外題
元の外題
須磨都源平躑躅
初演
文政5.5(大坂・市の側芝居)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の扇屋の言及

【料理茶屋】より

…百川は店名がそのまま落語の演題になっている唯一の店で,これも後に卓袱料理でも名を売った。1799年(寛政11)には郊外の王子村(現,北区)に海老屋,扇屋の2軒が開業した。この両者は最初に海老屋,後に扇屋が落語《王子の狐》に話の舞台として登場する。…

※「扇屋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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