末広(読み)すえひろがり

精選版 日本国語大辞典「末広」の解説

すえ‐ひろがり すゑ‥【末広】

[1] 〘名〙
※虎明本狂言・末広がり(室町末‐近世初)「不審尤じゃ、すゑひろがりにいたひて見せう」
※御伽草子・おようの尼(室町時代短篇集所収)(室町末)上「よきつまに、あはせ給ひ、すゑひろかりに、さかへさせたまふべきと」
③ =すえひろ(末広)③④〔日葡辞書(1603‐04)〕
※咄本・内閣文庫本醒睡笑(1628)八「金磨の扇すへひろかりを持たるあり」
[2]
[一] 狂言。各流。都に末広がりを買いに行った太郎冠者は、悪者にだまされて、古傘を買って帰り、主にしかられる。そこで太郎冠者は悪者に教えられた囃子物をはやし、主のきげんを直す。
[二] 歌舞伎所作事。
① 長唄。三世桜田治助作詞。杵屋三郎助(一〇世杵屋六左衛門)作曲。三世藤間勘十郎振付。本名題「稚美鳥末広(わかみどりすえひろがり)」。嘉永七年(一八五四)江戸中村座初演。(一)の囃子物のくだりを中心に大名と太郎冠者が踊る。
② 常磐津。本名題「寿末広(ことぶきすえひろ)」。明治一一年(一八七八)東京新富座の開場式に上演の予定が変更となり中止になった曲。やはり(一)の後半により作曲。
[三] 一中節。大槻如電作詞。四世菅野序遊作曲。明治一三年(一八八〇)五月、(一)により作曲。

すえ‐ひろ・し すゑ‥【末広】

〘形ク〙 (「すえびろし」とも)
① 次第に末の方が広がっていくさま。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「ミアコワ ワウギ ヒロガリタル ゴトク suyebirǒ(スエビラウ) ナリヌ〔長明〕」
② 次第に繁栄、繁盛するさま。子孫が栄えるさま。
※今鏡(1170)七「弟はすへひろく帝一の人も出で来給ふべき相おはす」

すえ‐ひろ すゑ‥【末広】

〘名〙
① 次第に末の方が広がっていくこと。すえひろがり。
※方丈記(1212)「吹き迷ふ風に、とかく移りゆくほどに、扇をひろげたるごとくすゑひろになりぬ」
② 次第に栄えていくこと。すえひろがり。
※狂歌・大団(1703)七「末ひろの初の春を待えよといもせの中をあふぐばかりぞ」
③ 紙張りの扇の総称。開くと末の方が広がるところからいう。すえひろがり。すえひろがりおうぎ。すえひろおうぎ。
※光源院殿御元服記(1546)「御扇、傍に置かるる、末広也」
④ 親骨の先端を外方に反らせた両面張りの紙扇。閉じると先端が広がるところからいう。先端がこれよりも狭い中啓(ちゅうけい)をさすこともある。すえひろがり。すえひろおうぎ。すえひろがりおうぎ。
※御伽草子・大黒舞(室町時代物語集所収)(室町末)「大こくはうちでのこづちに、すゑひろをとりそへて」
⑤ 紋所の名。末広の形を図案化したもので、重ね末広、三つ末広などがある。
⑥ 江戸時代の酒の名。
※常磐津・紅葉傘絲錦色木(善知鳥)(1778)上「花よりも紅葉よりも、是がなくてはなら酒、末広(スヱヒロ)すみだ川、引受け引受け酔うたとさ」

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デジタル大辞泉「末広」の解説

すえ‐ひろ〔すゑ‐〕【末広】

しだいに末のほうが広がること。末広がり。「湖面に末広の航跡をしるす」「末広形」
しだいに栄えること。末広がり。「ご当家の末広をお祈りします」
扇子、また中啓(ちゅうけい)異称。広がり栄えるで、祝い事に用いるものなどをいう。末広がり
茶道具で、末のほうがしだいに広がった形をしたもの。花入れかご・釜・水指し・菓子器・向こう付けなどにある。
紋所の名。開いた、または扇を組み合わせたさまを描いたもの。

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世界大百科事典内の末広の言及

【欧化主義】より

…開国後の日本で欧米をモデルとして制度文物を変革していこうとした動向をいう。狭義では,1880年代半ばに条約改正と関連して明治政府が推進した,鹿鳴館に象徴されるような洋風化の動向,あるいは,それを〈貴族的欧化主義〉と批判し,みずから〈平民的欧化主義〉を唱道した日清戦争前の徳富蘇峰らの言動をさす場合がある。〈欧化〉という言葉は欧米化が簡略化したものであるから,1945年の敗戦後に〈アメリカナイゼーション〉と称された動向なども欧化に含めてよいが,最近では〈欧化〉〈欧化主義〉よりも〈西洋化〉〈西洋主義〉という言葉のほうが一般化している。…

【中啓】より

…扇の一種で末広(すえひろ),浮折(うけおり)などとも称する。啓は開くの意で,たたんでも頭部が半開きになっている形状からの名称。…

※「末広」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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