蝙蝠(読み)カワホリ

デジタル大辞泉の解説

かわ‐ほり〔かは‐〕【蝙蝠】

《「かわぼり」とも》
コウモリ古名
「人もなく鳥もなからむ島にてはこの―も君もたづねむ」〈和泉式部集・下〉
蝙蝠扇(かわほりおうぎ)」の略。
蝙蝠羽織(かわほりばおり)」の略。

こうもり〔かうもり〕【蝙蝠】

《「かわほり」の音変化》
翼手目の哺乳類の総称。前あしおよびその指が著しく発達し、これらと胴・後あし・尾との間にうすい飛膜が張って翼を形成する。視覚は鈍いが、声帯から超音波を発して、その反響を聞きながら障害物との距離をはかり、鳥のように飛び回る。夜行性。昼間は、後あしにある5本の指の鋭いかぎ状の爪で、木や岩などにぶら下がる。名は、蚊をよく捕食するところから、蚊屠(かほふ)りと呼ばれたのが語源。アブラコウモリキクガシラコウモリオオコウモリなど約950種が世界に分布。かくいどり。かわほり。 夏》「―やひるも灯ともす楽屋口/荷風
《鳥かけものか区別しにくいところから》態度のはっきりしない者。状況次第で有利な側についたりする者をののしっていう語。
こうもり傘」の略。
[補説]作品名別項。→こうもり

へん‐ぷく【××蝠】

コウモリのこと。

こうもり[曲名]

《原題、〈ドイツ〉Die Fledermausヨハン=シュトラウス2世オペレッタ。全3幕。1873年作曲。「こうもり博士」とよばれる男が一芝居打って友人夫婦に仕返しを目論む喜劇。

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大辞林 第三版の解説

かわほり【蝙蝠】

コウモリの古名。 [季] 夏。 「簾すだれもへりは-に食はれて/大和 173
蝙蝠扇かわほりおうぎ」に同じ。

こうもり【蝙蝠】

〔「かわほり」の転〕
哺乳綱翼手目に属する動物の総称。体はネズミに似るが、前肢の上腕骨・前腕骨および指骨・掌骨が著しく発達し、指・胴・後肢・尾の間に薄い飛膜を張って翼となる。鳥のように自由に飛べる唯一の哺乳類。後肢の鋭いかぎ状の爪をそなえた五本の指で木や洞穴の天井などにぶら下がる。超音波を発し、その反射を聞いて、障害物との距離を感知しながら飛ぶものが多い。約950種が全世界に分布し、熱帯・亜熱帯に多い。夜行性で昼間は暗所・物陰にひそむ。かくいどり。 [季] 夏。
「蝙蝠傘」の略。
[句項目] 蝙蝠も鳥のうち

へんぷく【蝙蝠】

動物のコウモリのこと。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

精選版 日本国語大辞典の解説

かわ‐ぶり かは‥【蝙蝠】

〘名〙 (「かわふり」とも) =かわほり(蝙蝠)
俳諧・続三㟢誌(1782)「かはふりや釣瓶(つるべ)の竿に行当り〈翠霞〉」

かわ‐ほり かは‥【蝙蝠】

〘名〙 (「かわぼり」とも)
① 「こうもり(蝙蝠)」のもとの語形。かわぶり。《季・夏》
書紀(720)持統八年一〇月(寛文版訓)「白(しろ)き蝙蝠(カハホリ)獲たる者」
大和(947‐957頃)一七三「簾(すだれ)もへりはかはほりにくはれてところどころなし」
※枕(10C終)二一二「こま野の物語は、古かはほりさがし出でて持ていきしがをかしきなり」
雑俳・柳多留‐三八(1807)「柳の下で蝙蝠の直をつける」
※河内屋(1896)〈広津柳浪〉二「深張の蝙蝠傘(カハホリ)に日を避(よ)けながら」
⑤ 紋所の名。翼をひろげたコウモリをかたどったもの。歌舞伎俳優市川団十郎が替紋に用いたところから、団十郎をさすこともある。
※雑俳・柳多留‐一二一(1833)「真っ暗で下女蝙蝠の紋を付け」

こう‐ぶり かう‥【蝙蝠】

〘名〙 (「かわぼり(蝙蝠)」の変化した語) コウモリ。〔文明本節用集(室町中)〕
※多聞院日記‐天正一九年(1591)一二月一六日「水腫張満には、呑薬にかうふりの黒焼を入て煎して呑最上云々」

こう‐ぼり かう‥【蝙蝠】

〘名〙 (「かわほり(蝙蝠)」の変化した語) =こうもり(蝙蝠)(一)①
※書紀(720)持統八年一〇月(北野本訓)「白(しろ)き蝙蝠(カウホリ)獲たる者」

こう‐むり かう‥【蝙蝠】

〘名〙 (「こうぶり(蝙蝠)」の変化した語) コウモリ。〔明応本節用集(1496)〕

こう‐もり かう‥【蝙蝠】

[1] (「かわほり(かわぼり)」の変化した語)
① 翼手目に属する哺乳類の総称。一八科約一〇〇〇種。体はネズミに似ているが、前あしが著しく発達し、指の間から体のわきに飛膜があり翼をかたちづくる。多くの種では後あしと尾のあいだにも膜がある。後あしの五本の指はかぎ状で、木や岩などにぶらさがるのに適する。大型の大翼手類と小型の小翼手類に大別される。前者は視覚が発達しているが、後者は視覚が弱く、声帯から特別な超音波を出し、その反射を耳でとらえて距離をはかりながら飛ぶ。昼は岩穴や屋根裏などに潜み、夕方から飛び出して食物をとる。大きさは翼の開張一・七メートル、体長四〇センチメートル、体重九〇〇グラムに達するジャワオオコウモリから、翼開張一六センチメートル、体長三センチメートル、体重二グラム以下(哺乳類中最小)のブタバチコウモリまである。かわほり。かくいどり。へんぷく。てんそ。こうぼり。《季・夏》 〔伊京集(室町)〕
② ①の飛ぶ姿をかたどった模様。また、紋所。
※雑俳・柳多留‐六三(1813)「日か入ると息子蝙蝠着て出かけ」
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉八「片手に蝠傘(カウモリ)さしかけつつ。片手で額を押へながら」
④ 状況次第で勢いのよい方に味方する者。〔かくし言葉の字引(1929)〕
[2] 端唄、小唄。七世市川団十郎の大坂興行を歓迎して、地元のひいきが作ったもので、「こうもりが出て来た浜の」で始まる。蝙蝠は団十郎の家紋である。
[語誌](1)動物の分類としては哺乳類に属するが、前肢が翼となって鳥のように空中を自由に飛行するので、古くからしばしば、似て非なるもの、都合で所属を変えるものなどのたとえに用いられる。「愚迷発心集(1213頃)」の「猥しく比丘と号すれども甚蝙蝠の如し、剰仏子と称す、恐くは慚愧すべし」などがこれである。
(2)古形のカハホリから現在の形のコウモリに至るまで語形が様々に変化した。中古の文献では「カハホリ」の例が多いが、実際の発音はカハボリであった可能性が高い。その後、音韻の変化により、中古から中世にかけて、ハ行転呼によるカボリ、オ段とウ段の交替によるカブリ、バ行からマ行への変化によるカワリ、カワ→カウの変化によるカボリ、カブリ、カモリなどが生じ、語形が揺れた。全体的には、中世にはカハホリよりもカウモリが多く行なわれるようになり、カウモリが普通語、カハホリは文章語という使い分けも行なわれた。
(3)中世から近世にかけては、カウモリからコーモリへと発音が変化し、近世には完全にコーモリとなったが、仮名遣いの規範意識によって、表記は「カウモリ」のものがほとんどである。近代に入って、カハホリは使われなくなり、コウモリのみが残って現在に至った。ただし、方言では様々な形が残っている。

へん‐ぷく【蝙蝠】

〘名〙 (「へんふく」とも) コウモリのこと。《季・夏》
※空華集(1359‐68頃)七・次韻奉答此山和尚「山湫白日蛟龍睡。城寺黄昏蝙蝠翔」
※博物図教授法(1876‐77)〈安倍為任〉二「第二翅種類とは翅の如きものありて蝙蝠(ヘンプク)類をいふなり」

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世界大百科事典内の蝙蝠の言及

【衣冠】より

…装束を着用する衣紋(えもん)の技術が進んでも,衣冠は束帯よりも簡単で広く一般に正装なみに用いられた。それに,束帯では笏(しやく)を持つが,衣冠の場合には檜扇(ひおうぎ),後には細い骨に片面だけ紙をはりつけた蝙蝠(かわほり)という扇や,今日の末広の類をも持つことになった。つまり,正装の束帯の最も重要な要素である冠と袍との中心を固守しながら,その他の諸部分をできるだけ実生活に適合するように順次に変化させたものが衣冠で,束帯の正装としての伝統を保持する努力に並行して,この正装を時代の実情に即応せしめて進展したところに衣冠の歴史性が認められる。…

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