手無(読み)てなし

精選版 日本国語大辞典 「手無」の意味・読み・例文・類語

て‐なし【手無】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 手または腕のないこと。また、その人。
  3. 袖無(そでなし)胴着
    1. [初出の実例]「下臈の著る手なしといふ布著物を著て」(出典:古今著聞集(1254)二〇)
    2. 手無<b>②</b>〈扇面法華経〉
      手無扇面法華経
  4. ( 供御・調度に手を触れることができないところから ) 月経をいう女房詞
    1. [初出の実例]「女中御てなしにて、御はいせんに三条さねえためす」(出典:御湯殿上日記‐慶長三年(1598)二月一二日)
  5. 無能なこと。また、その者。
    1. [初出の実例]「さぼてんといふ手なしでも、春の末にゃアかつほもくひ」(出典:洒落本・愚人贅漢居続借金(1783))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「手無」の意味・わかりやすい解説

手無 (てなし)

最も原始的な日本の衣服形態で,古くは布肩衣(ぬのかたぎぬ)ともいう。古代においては,豊富な布で手先をおおう袖は,当時の貴族階級の象徴でもあり,これに対して,最低限の用布量と労働に適した手無の形は,身分の低い者の衣服であった。(ちはや),貫頭衣と呼ぶ古代以来の衣も,その発生時は無袖と思われる。江戸時代には袖なしの胴着,羽織,はんてんがあった。これらは〈じんべ〉〈さるこ〉〈でんち〉〈ちゃんちゃんこ〉などの地方別の俗称もあるところから,全国的に年齢や男女の別なく広く愛用されていたことがわかる。布も木綿から絹物までにわたり,単(ひとえ),袷(あわせ),綿入れもあり,上着にも間着(あいぎ)にも用いられた。江戸時代の裃の前身が肩衣袴(かたぎぬばかま)(肩衣と袴)と呼ばれていたのは,布肩衣と同様,無袖の形によるものと思われる。
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