精選版 日本国語大辞典 「手継証文」の意味・読み・例文・類語
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古代・中世の土地財産に関する文書。9世紀以降,荘園1荘から洛中の敷地1筆にいたるまで,土地の所有権は売券・譲状・寄進状など,権利移転のときに新・旧所有者間で授受された文書によって保証された。これらを支証または証文と称した。所有者が代わるたびに,その土地の既存の証文類がひとつながりになって,手から手へ渡されたので手継という。その形態は,最も古い証文を奥にして,手前へ新しい証文を継ぎ足し,その継目には改ざんを防ぐために花押が据えられた。これを所有することが,その土地を領有する権利主張の基本となるところから,本券ともいわれた。これによってその土地の相伝次第を確認することができる。最も長大な例は,1349年(正平4・貞和5)3月に東寺領となった洛中左京塩小路大宮敷地手継券文であり,1125年(天治2)以来225年間にわたる38通の証文が継がれて,《東寺百合文書》のなかに伝わっている。
執筆者:橋本 初子
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手継券文(けんもん)、連券ともいう。土地所有(または占有)権の移転を証明するために作成された証文(権利書類)を年代順に張り継いだ一連の文書。平安中期から中世を通じてみられる。一つの土地をAからBに譲与すれば譲状(ゆずりじょう)、売却すれば売券(ばいけん)(沽券(こけん))が作成される。新しい権利者は前の権利者から、土地とともに土地に関する一連の文書を受け継ぎ、自分の権利が正当な権原を有するものであることの証明とする。一つの土地が分割されるときには、一方に正文(しょうもん)、他方に案文(あんもん)(写(うつし))が渡され、また、関連文書は引き渡さなかったことを注記するなどの処置がなされる。わが国では土地所有権の存在証明が証文を第一としたことに由来するが、相当長期にわたって権利関係の推移、社会経済状態を考察する好史料である。
[羽下徳彦]
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…戸籍も同様で,たとえば〈庚午年籍〉は永久保存されるべきものであった。(b)の場合としては,土地財産の売買・譲与・寄進などに当たって授受される手継証文(手継券文ともいう)がある。これは土地財産権の存在を証明するものとして,その移転にともなって作成された売券・譲状・寄進状をつぎつぎ集積していったものである。…
…それを具体的に立証するために,その対象物が売主の所有に至るまでの,過去の売券や譲状(ゆずりじよう)などの証文を一巻の巻物として,売券に添えて買主に渡すことが,売買における必須の手続であった。この巻物を当時〈手継証文(てつぎしようもん)〉〈本公験(ほんくげん)〉などと称した。中世では火事・盗難・戦乱などにより,手継証文などがしばしば紛失したので,売主はその事情を明記した文書を作り,これに在地の役人や有力者の証判を受けた。…
※「手継証文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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