打ち靡く(読み)ウチナビク

デジタル大辞泉 「打ち靡く」の意味・読み・例文・類語

うち‐なび・く【打ち×靡く】

[動カ四]
草や髪などが、風になびく。
穂先蘇枋すはうにいと濃きが、朝霧にぬれて―・きたるは」〈・六七〉
人が横になる。
「うつせみの世の人なれば―・き床にい伏し」〈・三九六二〉
強くひきつけられる。
「今更に何をか思はむ―・き心は君に寄りにしものを」〈・五〇五〉
[動カ下二]攻めて服従させる。
「其の勢すでに七百余騎、国中を―・け」〈太平記・三〉

うち‐なびく【打ち×靡く】

[枕]茂った春の草木がなびく意から、「草」「春」にかかる。
「―草香くさかの山を夕暮れに」〈・一四二八〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「打ち靡く」の意味・読み・例文・類語

うち‐なび・く【打靡】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行四段活用 〙 ( 「うち」は接頭語 )
    1. 草木、髪などがさっと横に伏せる。
      1. [初出の実例]「ありつつも君をば待たむ打靡(うちなびく)わが黒髪に霜の置くまでに」(出典万葉集(8C後)一・八七)
      2. 「風にうちなびく下簾(したすだれ)のひまひまも」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    2. 人が横になる。横臥(おうが)する。
      1. [初出の実例]「阿騎の野に宿る旅人打靡(うちなびき)(い)も寝(ぬ)らめやも古(いにしへ)思ふに」(出典:万葉集(8C後)一・四六)
    3. ( 心がなびくという比喩的な言い方から転じて ) 力や権威に服従する。心服する。相手に同意する。慕い寄る。
      1. [初出の実例]「霍公鳥(ほととぎす) 鳴きし響(とよ)めば 宇知奈妣久(ウチナビク) 心もしのに そこをしも うら恋しみと」(出典:万葉集(8C後)一七・三九九三)
      2. 「こよなううちなびき給へる御けしき浅からねば」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)一)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 攻めて服従させる。また、銃砲を撃って鎮圧する。
    1. [初出の実例]「其勢すでに七百余騎、国中を打靡(ナビケ)」(出典:太平記(14C後)三)
  3. [ 3 ] 草のなびく様子から「草」にかかり、また、春には草木がなびくところから「春」にもかかる。
    1. [初出の実例]「打靡(うちなびく)春来(きた)るらし山の際(ま)の遠き木末(こぬれ)の咲き行く見れば」(出典:万葉集(8C後)八・一四二二)
    2. 「おし照る 難波を過ぎて 打靡(うちなびく) 草香の山を 夕暮に わが越えくれば」(出典:万葉集(8C後)八・一四二八)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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