国中(読み)くになか

精選版 日本国語大辞典 「国中」の意味・読み・例文・類語

くに‐なか【国中】

  1. 〘 名詞 〙
  2. この国のなか一国のなか。
    1. [初出の実例]「徒衆(ともがら)引率(ひきゐ)て、国中(くになか)を横しまに行き」(出典常陸風土記(717‐724頃)茨城)
  3. 国の中央部。くんなか。
    1. [初出の実例]「山深く住むもの、二人つれだち国中に出でけり」(出典:咄本・醒睡笑(1628)四)

こく‐ちゅう【国中】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「こくぢゅう」とも ) 一国の領域内。国の内。国内。くにじゅう。
    1. [初出の実例]「国中(コクチウ)の民にあまねく念仏を勧めて」(出典:発心集(1216頃か)七)
    2. [その他の文献]〔礼記‐曲礼上〕

くぬち【国中・国内】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「くにうち」の変化した語 ) その国のうち。国うち。国じゅう。
    1. [初出の実例]「悔(くや)しかもかく知らませばあをによし久奴知(クヌチ)ことごと見せましものを」(出典:万葉集(8C後)五・七九七)

くん‐なか【国中】

  1. 〘 名詞 〙くになか(国中)

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日本歴史地名大系 「国中」の解説

国中
くになか

甲府盆地一帯の呼称で、広義には河内かわうち(富士川流域)を含む。「勝山記」によれば、文亀元年(一五〇一)九月一八日伊豆国から北条早雲が甲斐に攻め入り、吉田城よしだのじよう山・小倉おぐら(現富士吉田市)に拠った。これに対し「国中大勢」が両所を取巻いたとある。また永正五年(一五〇八)一二月五日に「国中ニテ合戦」があり、都留つる郡側が負けたとしている。同七年には「国中都留郡ト御和ホク落付」とある。これらの記述から国中の呼称は都留郡(郡内)と対置されるもので、一六世紀までには一般的であったことが知られる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国中」の意味・わかりやすい解説

国中
くになか

山梨県の西半部をさす地方名。東半部の郡内(ぐんない)地方に対して用いられ、甲府盆地を中心に周辺山地の山麓(さんろく)部一帯の総称である。甲斐(かい)(山梨県)の国は古くから天然境界によって他国と境され、その境域はほとんど変化していないが、しかし甲斐国内は大菩薩嶺(だいぼさつれい)から御坂山地(みさかさんち)に続く山脈東西に区分されており、この二つの地域は自然条件の違いとともに生活や文化なども異なったものがある。とくに西半部は肥沃(ひよく)な甲府盆地があって人口も多く、国府も古くからこの地に置かれていた関係で、国の中心部、つまり国中の呼称が出たものと考えられている。

[横田忠夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国中」の意味・わかりやすい解説

国中
くになか

山梨県の中央部,甲府盆地を中心とする富士川流域をさす地方名。甲斐国の中心をなす甲府盆地があり,国府もおかれたことから生じた名称と思われる。御坂山地および秩父山地の大菩薩連嶺で桂川流域の郡内地方とへだてられる。狭義には甲府盆地をさし,南部の富士川の谷を中心とする地域は河内と呼ぶこともある。

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世界大百科事典(旧版)内の国中の言及

【山梨[県]】より

…県中央に位置する甲府盆地には,北東から笛吹(ふえふき)川,北西から釜無(かまなし)川が流入し,南西部で合流して富士川となり,駿河湾に注いでいる。甲府盆地は県内唯一のまとまった平地で,古代以来甲斐の中心的な地位を占めてきたため,周辺地域を含めて国中(くになか)と呼ばれてきた。しかし甲府盆地を含めた平地も扇状地や河岸段丘が広く,肥沃な沖積地は少ない。…

【奈良[県]】より

…県の製造品出荷額の割合は一般機械が23%,電気機器が17%など(1995)である。
[国中,西山中,東山中,奥,南山の5地域]
 奈良県は中央構造線を境に北部と南部に二分されるが,さらに自然条件や歴史,産業,商圏の違いも考えあわせて北部を国中(くんなか)(奈良盆地),西山中(にしさんちゆう)(生駒・金剛山地),東山中(笠置山地),奥(宇陀・竜門山地)に四分し,これに南部の南山(なんざん)(吉野山地)を合わせて5地域とする。(1)国中 奈良盆地のほぼ全域にあたり,面積は県域の約1/10にすぎないが,古代以来大和国随一の平地として中心的な地位を占めてきたため,現在もこの称がある。…

【奈良盆地】より

…大和平野,大和盆地ともいう。また古代に藤原京平城京が造営された地で,大和国の中心をなしてきたため現在でも国中(くんなか)の称がある。《古事記》景行天皇条に〈青垣 山ごもれる 大和しうるはし〉とうたわれるように,東は笠置山地(大和高原)と春日断層崖,西は生駒・金剛両山地,北は奈良山丘陵,南は竜門山地によって囲まれる。…

※「国中」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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