抑制と均衡(読み)よくせいときんこう(その他表記)checks and balances

百科事典マイペディア 「抑制と均衡」の意味・わかりやすい解説

抑制と均衡【よくせいときんこう】

フランスのモンテスキューが《法の精神》のなかで説いた権力分立論のキーワードで,立法権・執行権・司法権の三権をそれぞれ別々の機関に分立させるとともに権力機関が厳格にその権限領域を守り(権力の分離),権力によって権力を抑制(権力の均衡)させるべきだとする考え。チェックス・アンド・バランスセスChecks and Balancesの訳語で,抑制均衡ともいう。それによって権力の専制化を防ぎ,国民の自由・権利を守ることができる,とする。モンテスキューのこの考えは,名誉革命後の英国の政治体制から学んだもので,当時のフランスにおけるアンシャン・レジーム下の専制政治に対する強烈な批判を含んでいた。また,アメリカ独立宣言に大きな影響を与えたといわれ,彼の考えは米国の大統領制のなかに具現されているといえる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抑制と均衡」の意味・わかりやすい解説

抑制と均衡
よくせいときんこう
checks and balances

権力分立による国家統治機構。チェック・アンド・バランスともいう。国家の機能遂行に必要な権限を分立する機関の間に分担させ,互いに他の機関の権力行使を抑制し,あるいは1機関が他の機関と権力を分有しつつ互いに均衡をとることを通じて,一つの国家機関の意思が他を圧倒することを防止する仕組みである。アメリカの連邦政府はその典型的な例である。ここでは (1) 議会行政の目的を策定し,組織,人事,予算に関与する権限,(2) 大統領法案に対する拒否権,裁判官の人事に関与する権限,(3) 裁判所に法律の違憲審査権と行政行為の違法審査権がそれぞれ与えられている。このような制度では,政治体系の主要な勢力間に広く合意が成立しないかぎり決定を下すことができない。したがって少数者の利益保護には有効であるが,政府の行動を保守的にするという問題をはらんでいる。

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