日本大百科全書(ニッポニカ) 「押し買い」の意味・わかりやすい解説
押し買い
おしがい
業者が個人宅に押しかけ、強引に物品を買い取ること。訪問購入ともいう。押し売りに対していう。2010年(平成22)ごろから悪質な業者が高齢者宅などを訪れ、宝石や貴金属、時計、着物などを相場よりも安く買い取っていくトラブルが相次いだ。国民生活センターによると、押し買いにかかわる相談件数は、2009年度が138件だったのに対し、2010年度は2424件、2011年度は4143件、2016年度には8648件と激増した。
訪問販売などの商取引を定めた従来の法律では、売り手側に対する規制はあるものの、買い手側についての規制や売り主の保護については定められていなかった。そのため、国は改正特定商取引法を2012年8月に国会で成立させた(2013年2月施行)。この改正では、訪問販売についての規定(氏名等の明示義務、再勧誘の禁止、書面交付義務、クーリング・オフなど)に加えて、(1)消費者からの依頼なしに業者は物品の売却を勧誘してはならない、(2)クーリング・オフ期間中に業者が物品を第三者に転売したときには、その旨をただちに売り主に通知しなければならない、(3)業者から物品を購入する者に対し、その物品はクーリング・オフされる可能性があることを通知しなければならない(クーリング・オフ期間中に転売された場合にも、売り主が所有権を主張できることを意図したもの)、などの規定が取り入れられた。書面の交付がクーリング・オフ(8日間)の起算点とされ、クーリング・オフ期間中は売買契約を解除できるだけでなく、物品の引き渡しを拒否して売り主の手元に置くこともできると規定された。
規制対象は原則的にすべての物品とされたが、消費者の利益を損なうおそれがない物品や、規定によって流通が著しく害されるおそれがある物品として、大型家電製品、家具、自動車(二輪車を除く)、書籍・CD・DVD・ゲームソフト類、有価証券の5品目が政令により適用除外とされた。
[編集部 2018年6月19日]