押出加工(読み)おしだしかこう(英語表記)extrusion

翻訳|extrusion

改訂新版 世界大百科事典 「押出加工」の意味・わかりやすい解説

押出加工 (おしだしかこう)
extrusion

材料を容器コンテナー)に入れて圧力をかけ,狭い出口ダイス)から流出させて,ダイスの断面形状を有する長い製品を得る加工法を押出加工または単に押出しと呼ぶ。金属の押出しは,初め1797年に機械的ピストンを用いて鉛を対象として鉛管を製造するために行われた。押出しの際に主として用いられる加圧装置は長行程の液圧プレスであるが,この液圧プレスが初めて鉛管の押出しに適用されたのは1867年で,近代的な押出機としての形をまとめたのはドイツ人ディックG.A.Dickであり,94年のことであった。鉛に次いで銅,銅合金の棒,管,形材の押出しが行われるようになり,20世紀の金属であるアルミニウムとその合金は1960年ごろ建設材料として実用化されると同時に押出しにより棒材や形材が製造されるようになった。押出加工による製品には,窓枠用などのアルミサッシュ材,アルミニウムや銅およびそれらの合金などの棒材,形材,管材などのほか,ステンレス鋼や特殊鋼の管材などがある。

 コンテナーに入っている材料を押し出す場合には,ところてんのように材料の後ろから出口のほうへ材料全体を押す前方押出し正押出し)の方法と,孔のあいた栓のようなダイスを材料の中へ押し込む後方押出し(逆押出し)との二つの方法がある。前方とか正とかいう呼称は力を加える方向と製品が流出する方向とが一致していることを意味しており,後方や逆という呼称はそれらが互いに反対であることを意味している。作業性などの面から,現在は前方押出法が大量生産工程では採用されている。押出加工製品に生ずる欠陥が少ないことや押出荷重が小さくてすむ点などでは後方押出法のほうがすぐれているが,押出装置や押出機の機構の面からは構成上困難な点が多く,実用面では前方押出法に比較してまだ立ち遅れている。

 押出しには加工温度により熱間押出し冷間押出しがある。押出しでは流出口(ダイス部分)以外では材料に高い圧力が作用しているので,材料とコンテナーとの間や材料とダイスとの間には大きな摩擦抵抗が作用し,加工に大きい動力が必要である。そこで一般には材料の変形抵抗が低くなる熱間で行われる。この場合,材料が加熱されているので,コンテナーやダイスは耐熱性が要求される。また,材料から周囲へ熱が流出すると加工性が低下する。これらの点でとくに高温を要する鋼の熱間押出しは非常に困難とされてきた。しかしフランスのセジュルネJ.Sejournetと彼の援助者ユージン製鋼会社Aciéries Électriques d'Ugineは,溶融ガラスを潤滑剤として使用することを発案し,鋼の熱間押出し,とくに鋼管の熱間押出法を開発した。これは第2次大戦以後に行われた塑性加工関係の技術開発の最大のものの一つである。潤滑剤としての溶融ガラスはそれ自体優れた熱の絶縁体であり,コンテナーとダイスの保護と押出荷重の低減との一石二鳥の効果を発揮している。

 アルミサッシュなどの断面は非常に複雑な形をしているが,これは,ダイスに特別な工夫をこらし,アルミニウムやその合金が加工過程でいったん分離されても,空気にふれないうちに合わせれば容易に接合する性質を利用して,一つの押出機の中で何段もの断面変化を与えて製作しているものである。このとき使用するダイスをスパイダーダイスと呼んでいる。

 押出加工は圧力の高い状態で材料を加工するため,材料内に欠陥,たとえば微視的な割れなどが比較的生じにくい加工法である。さらにこの特性を生かすものとして静水圧押出法が考案された。通常の押出法では押板(ラム)またはダイスという固体を介して押出力を材料に伝えるのに対して,この方法は適度の粘性をもつ流体を介して押出力を材料に伝えるものである。前方押出法であれば,この流体は材料とコンテナーとの間および材料とダイスとの間に入り込み,材料に3方から圧力を加えることになり,また,材料とコンテナーまたはダイスとの間に発生する摩擦力を流体自体の粘性抵抗のレベルに抑えるという役割も演ずる。この方法の開発によって冷間における押出し(冷間押出し)が可能になった。流体にガラスのような物質を使用すれば,熱間押出しもすることができる。さらに,押出口から高圧の液圧を加えることにより材料内に作用する圧力を高め,変形中の材料の破壊を起こりにくくして製品を製造することが可能である。なお冷間後方押出し(衝撃押出し)については〈鍛造〉の項を,プラスチックの押出加工については〈プラスチック成形加工〉の項を参照されたい。
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百科事典マイペディア 「押出加工」の意味・わかりやすい解説

押出加工【おしだしかこう】

押出しとも。金属製品,プラスチック製品,炭素製品などを製作する工法。製作する素材を強圧してダイス(金型)孔から押し出す加工法で,複雑な断面をもつ窓枠用アルミサッシなどのような,棒,管その他任意の断面形状の細長い製品を作る場合に用いられる。寸法精度がよい。熱間押出しと冷間押出しがある。
→関連項目塑性加工

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