指揮統制システム(読み)しきとうせいシステム(英語表記)command and control system

改訂新版 世界大百科事典 「指揮統制システム」の意味・わかりやすい解説

指揮・統制システム (しきとうせいシステム)
command and control system

C2と略称する。軍の各級指揮官が隷下部隊の活動を計画・指令し,その行動を監督・統制するために必要な施設,装備品,通信,手順,要員等で構成された体系総称

 軍隊の活動においては,指揮官の迅速かつ的確な状況判断,適時・適切な作戦の計画,指令,統制がきわめて重要であるが,兵器の進歩と多様化による戦闘空間の拡大,戦闘様相の複雑化,多様化,戦闘推移の急速化等の傾向と軍の組織の高度な専門分化によって,状況判断,計画,指令,監督,統制にかかわる多種多量な情報処理(収集,分析,評価,提示,伝達等)をいかに適時に適切に行うかが重要な問題となってきた。このような状況に対処するため,コンピューターをはじめとする高度な通信技術を駆使した軍用情報処理システムが開発され,指揮・統制システムとして多用されるようになった。

 なお,C2のほかに通信communication機能を重視したC3システム,さらに情報intelligenceを加えたC3Iシステムなどが実現されており,近年ではこれに相互運用性interoperabilityを付加したC3I2システムなどとしてシステム化される傾向にある。

 指揮・統制システムには,主対象とする作戦のレベルによって戦略用,戦術用,また作戦の種類によって航空作戦用,艦隊作戦用など各種のものがあり,それぞれ規模や構成も異なる。代表的なものとしては,アメリカの大統領が全3軍を指揮するための戦略用の全世界規模軍事指揮統制システムWorld Wide Military Command and Control System(WWMCCS)がある。戦術用のものとしては,アメリカ空軍の戦術航空作戦指揮統制システムTactical Air Control System(TACS),アメリカ海軍の艦隊用指揮統制システムNaval Tactical Data System(NTDS)などがある。日本のものとしては,航空自衛隊の防空作戦用指揮統制システム(BADGE(バツジ)),海上自衛隊の自衛艦隊指揮支援システムなどがある。また,陸,海,空の各自衛隊を総合的に指揮するための中央指揮所が防衛庁に設置され,各自衛隊の指揮統制システムと連接されて,国家的規模の指揮・統制システムが構成されている。

 情報処理関連技術の進歩や人工衛星の利用等により,広域にわたる多種多量な情報の迅速かつ総合的な処理が今後いっそう容易になり,分散配置された部隊の総合的な指揮・統制を容易にする一方,戦闘によるシステム機能の破壊等に備えて,重要機能の多重化や,下級システムの独立戦闘機能等もいっそう重要視されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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