改訂新版 世界大百科事典 「挽茶」の意味・わかりやすい解説
挽茶 (ひきちゃ)
碾茶とも書き,抹茶ともいう。玉露同様覆下園(おいしたえん)で育てた覆下茶を,揉捻(じゆうねん)することなく,蒸してそのまま乾燥し貯蔵する。この状態の茶葉を碾茶(てんちや)と呼び,これを茶臼でひいて粉末にしたものを飲用する。薄茶,濃茶(こいちや)の別があり,昔は使用される茶葉の部位などによって区別されていたが,現在では濃茶は甘味の多い濃厚なもの,薄茶はややあっさりした味のものになっている。いずれにせよ,使用する茶葉全体を粉末にして飲むので,茶葉の含有する葉緑素,植物繊維,タンニン,ビタミン,カフェインその他,すべての成分を利用することができる。飲用するほか,和菓子や料理にも利用され,美しい緑色と香味が賞美される。粉末にしたものは1週間ほどで変色し,香味も落ちてくるので,密封容器に入れて低温で保存し,短期間に使いきるようにしたい。抹茶の点て方(たてかた)や道具などについては,〈茶道(ちやどう)〉の項目を参照されたい。
執筆者:松下 智
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報