茶磨とも書く。抹茶をつくるのに用いる石製の挽(ひ)き臼。穀物などを挽く石臼に比べて非常に精巧に作られており,石材も美しい輝緑岩や砂岩など特別に吟味され,また挽き手を打ちこむ箇所には装飾が施されていることが多い。
中国で北宋のころ発達したが,日本へは鎌倉時代に南宋へ渡った禅僧たちによって,茶の湯とともに伝えられたと考えられている。中国では明代に入るころ,抹茶は廃れていったが,日本ではその後の約300年間に,禅僧を主とする上流階級の間に普及し,茶臼も国産されるようになった。室町時代の初期には京都,一条京極の祇陀院寺の門前に,すぐれた茶磨師がいたので茶臼を別名〈ギダイン〉あるいは〈ギダリン〉と呼ぶようになった。武野紹鷗,千利休のころにはやや大型の純日本式茶臼が出現した。織田信長,豊臣秀吉をはじめ上級武将たちの間で茶の湯が流行し,当時の城跡や館跡などから,戦火に焼けただれた茶臼片がしばしば出土している。しかし同時に,火薬の原料用木炭を微粉末化するのにも流用された可能性もある。江戸時代には一般町人の間にも茶の湯が行われるようになったが,茶臼は非常に高価でかつ入手困難であったため,茶を挽いて売る挽茶屋が出現した。
芭蕉の句に〈山のすがた蚕が茶臼の覆いかな〉という富士山を見ての句がある。これは使用しないときの茶臼に風呂敷をかぶせておく形から来ている。〈蚤が茶臼〉という俗謡を蚕に変えているのは,麓にたなびく雲であろう。なお全国に茶臼の名称を頭にもつ山岳,古墳が非常に多いのも興味深い。
執筆者:三輪 茂雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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