日本の緑茶の最高級品。一番茶期に多肥栽培(おもに窒素肥料)をしたチャの成木園に覆いをして日光を遮り、緑が濃く柔らかく育った芽をていねいに摘採したものを原料とする。製茶の工程は、煎茶(せんちゃ)と同様に、蒸し→粗揉(そじゅう)→揉捻(じゅうねん)→中揉(ちゅうじゅう)→精揉(せいじゅう)→乾燥を経てつくられるが、葉質は柔らかく水分も多いので、もむ力と加熱を煎茶に比べると控え目にする。
玉露が初めてつくられたのは、天保(てんぽう)年間(1830~44)に江戸の茶商山本山6代目の山本徳翁が宇治(京都府)に出たとき、てん茶の工程中のものをもんで乾燥、これを玉露と名づけ世に広めたことに始まるとされ、茶種としては比較的新しいものである。産地は宇治、八女(やめ)(福岡県)、岡部(静岡県)が有名であるが、生産量は日本茶全体の1%にも満たない。
高級品の形状は細くよれて針状、締まりは煎茶より緩く、色は緑が濃くてつやがある。香りは覆(おお)い香(か)と称して海苔(のり)の高級品のような独得の香りがあって、すっきりしているものがよい。茶をいれたときの水色(すいしょく)は煎茶に比べると黄色の度合いは少なく淡黄緑色で、冷めると成分中にカフェインが多いため白濁してくる。なお成分中には普通煎茶の約倍量のアミノ酸(おもにテアニン)を含み、タンニンは少ないのでとくにうま味、甘味を強く感じる。少量を味わいながら飲む茶である。茶の量は3人分で約10グラム(大さじ3杯)、湯は55~60℃に冷ましたものを70ミリリットル注いで約2分半ゆっくり浸出させる。
[桑原穆夫]
緑茶の最高級品。1835年(天保6)ころ山本山6代目の山本徳翁が売り出したとも,68年(明治1)に辻利右衛門がはじめて作ったともいわれる。一番茶の新芽が伸びる時期に,茶畑の全面を葭簀(よしず)や化学繊維の黒網で20日間ほどおおい,太陽光線を1/10くらいにまで制限した下で育てて摘採する。製茶工程は基本的には煎茶と変わらないが,原料の葉が薄くやわらかなため,温度の調節や揉捻のしかたがむずかしい。製品は細長い針状をなし,色は青黒く光沢のあるのがよいとされる。茶畑の管理その他に多くの経費を要し,製品も高価である。産地としては,京都府の宇治,静岡県の岡部などが知られるが,近年は福岡県八女(やめ)地方の生産の伸びが著しい。中国では湖北省西部の山間地,恩施というところで少量ながら作られている。
玉露ののみ方は,葉に含まれるアミノ酸の甘味とタンニンの苦渋味をほどよくひきだすところにこつがある。そのため,一煎目は40℃程度のぬるい湯で3分ほど浸出させて甘味を,二煎目は60℃程度でさわやかな苦味を,三煎目は80℃の湯で快い渋味をと,三煎まで楽しみたい。はじめに熱湯を注いでしまうと,一度にすべての味が出て玉露の美味は失われ,二煎目もきかなくなる。ふつう,小型のきゅうすと茶わんを使い,1人分として4gの茶葉を入れ,それが浸る程度の湯を注いで浸出させる。
執筆者:松下 智
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…園当り収量(製茶量)は,摘採対象の芽の生育程度,摘採方法によって大きく異なるが,日本では10a当り300~400kg,インドなどで120~150kgが標準である。 特殊な栽培法として,摘採前約20日間,わら,こもなどで95%程度遮光する覆下(おいした∥おおいした)園があり,玉露,てん(碾)茶など高級茶を生産する。また,防霜も兼ね,寒冷紗(しや)などで60%程度遮光する場合もあり,このような園から,かぶせ茶が生産される。…
…中国の緑茶は後者による釜炒製で,日本では九州の一部でこの釜炒茶が作られている。 日本緑茶には,煎茶,玉露,挽茶(ひきちや),番茶,玉緑茶などの種類があり,玉緑茶以外はすべて蒸製である。玉緑茶は釜炒製で,佐賀県の嬉野(うれしの)茶,熊本・宮崎両県の青柳茶が有名である。…
※「玉露」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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