煎茶(読み)せんちゃ

精選版 日本国語大辞典 「煎茶」の意味・読み・例文・類語

せん‐ちゃ【煎茶】

〘名〙
① 葉茶を湯で煎じ出す喫茶方式団茶や抹茶に対して、風通しのよい所で陰干しをした葉茶に湯を注いで、香りや味をたのしむもの。また、その葉茶や、煎じ出された飲みものをもいう。せんじちゃ。〔撮壌集(1454)〕
※俳諧・類船集(1676)仁「煎茶の釜をたぎらせて昔物語を聞はかうはしからずや」 〔新唐書芸文志・小説家類〕
② 俗に、玉露や番茶に対して中級の茶をいう。

せんじ‐ちゃ【煎茶】

〘名〙 煎じて飲む茶。せんちゃ。煎じ。
※俳諧・犬子集(1633)二「酒よりもせんじ茶でみよ姥桜〈重頼〉」

せん‐さ【煎茶】

〘名〙 =せんちゃ(煎茶)①〔運歩色葉(1548)〕

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デジタル大辞泉 「煎茶」の意味・読み・例文・類語

せん‐ちゃ【煎茶】

緑茶の一種。茶葉の新芽を製したもの。
葉茶を煎じて飲むこと。また、その煎じ出した茶。
[類語]日本茶新茶麦茶抹茶碾き茶玉露番茶緑茶グリーンティーほうじ茶玄米茶碾茶てんちゃ薄茶お薄濃い茶芽茶葉茶茎茶粉茶銘茶粗茶渋茶空茶からちゃ出涸らし

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改訂新版 世界大百科事典 「煎茶」の意味・わかりやすい解説

煎茶 (せんちゃ)

緑茶の一種で,玉露と番茶の中間の品質のもの。露地栽培で日光を遮蔽せずに,自然のままで育てた若芽でつくる。本来は茶葉を粉末にして湯でかきまぜて飲む抹茶に対して,茶葉に湯を注いで浸出させて飲む方式の茶を指した語で,煎じ茶,出茶(だしちや)とも呼ばれた。《煎茶仕用集》(1756)は近江信楽(しがらき)産の16種の銘柄を挙げ,〈日東煎茶此産第一とす〉と,煎茶は信楽産が最良であるとしている。その煎茶を玉露と煎茶に区分するようになったのは,幕末~明治初期に玉露という,新しく良質な煎茶が出現したことによるものであろう。いまの日本で茶といえば,ふつうこの煎茶を指し,生産量も緑茶全体の80%余を占めている。タンニンカフェイン,ビタミン類,アミノ酸,葉緑素などを含み,とくにビタミンCの含有量は野菜や果実よりも多い。北海道と東北の一部を除いて日本全土でつくられており,産額は静岡県が最も多く,鹿児島,三重,埼玉の諸県がそれに続く。産地銘柄としては,静岡県の川根茶,本山茶,京都府では宇治田原や和束(わづか)の宇治茶,埼玉県の狭山(さやま)茶,三重県の伊勢茶,奈良県の大和茶などが知られている。品種としては,明治末に静岡県で育てられた藪北(やぶきた)が品質,収量ともにすぐれ,全国的に栽培されて茶樹の代表種とされている。

 煎茶は玉露にくらべて温度の高い湯を使う。上級品の場合は,3人分として6~7gの茶葉をきゅうすに入れ,完全に沸騰させてから湯冷ましにかけて60~70℃にした湯を170mlほど注ぎ,2分ほど浸出させてから茶碗に注ぎ分ける。近年知られるようになった深蒸し茶の場合は,一般の煎茶よりも長く蒸してあるため,熱い湯でもおいしく飲むことができる。なお,茶道の流派の中には,抹茶ではなく煎茶を用いるものがあり,それらは煎茶または煎茶道と呼ばれている。
緑茶
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「煎茶」の意味・わかりやすい解説

煎茶
せんちゃ

緑茶の一種。1738年(元文3)に山城(やましろ)(京都府)の永谷宗円(そうえん)が創案した茶で、日本人の嗜好(しこう)によくあって発展普及し今日に及んでいる。摘み取った茶の芽葉をまず蒸し、粗揉(そじゅう)→揉捻(じゅうねん)→中揉(ちゅうじゅう)→精揉(せいじゅう)→乾燥の工程を経て製品になる。摘採の季節によって一番茶、二番茶、三番茶に分けられるが、一番茶は芽葉も柔らかく形も整い香味も優れ、なかでも立春から数えて八十八夜前後に摘んでつくられた茶は、いわゆる新茶として味、香りともに優れ珍重される。中、下級茶は一番茶末期の硬化葉や二、三番茶を原料としたもので、アミノ酸は少なく、苦味成分のタンニンが多く、うま味は落ちる。

 良品は形状が葉長方向に細く伸び、よりが固く締まっていて、全体に形がそろっていて、色は濃緑色でつやもある。茶をいれたときの水色(すいしょく)は濃黄淡緑色で沈殿の少ないもの、また香気は清らかな芳香で、青臭み、生臭みのないものがよい。味は苦味、渋味と甘味、うま味が調和して舌にまろやかな感じを与え、あとくち(飲んだあとに残るもの)の爽快(そうかい)なものが良品である。昔は産地により特徴があり、品質にも違いがあったが、現在では栽培、製造の方法も進歩し、品種も普及して品質の格差は縮まり、各地の特色もならされてきている。山間部などで生産規模の拡大がむずかしい所では、いまでもていねいに摘み取って製造しており、良品が多い。上級品を飲む場合、茶の量は3人分で約6グラム、湯は70℃ぐらいに冷まし、170~180ミリリットル注いで約2分浸出させる。

[桑原穆夫]

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百科事典マイペディア 「煎茶」の意味・わかりやすい解説

煎茶【せんちゃ】

茶の葉を蒸して乾燥したもので,日本で茶といえば煎茶を意味する。生産量は緑茶の80%を占める。葉は新芽の先端の三葉を摘んで製する。玉露番茶と同様煎じて飲用するが,玉露より高い60〜70℃の湯でいれる。煎茶様式は中国では早くから起こり,日本でも江戸時代に普及した。茶道では挽茶(ひきちゃ)(抹茶(まっちゃ))に対して煎茶道があり,小川流,花月庵流などの流儀がある。
→関連項目緑茶

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「煎茶」の意味・わかりやすい解説

煎茶
せんちゃ

緑茶の代表的なもの。普通の茶園の若葉を原料とし,いったん葉を短時間加熱して酵素をこわしたうえで乾燥してつくる。この結果,葉緑素がほとんど破壊されずに緑色を保っている。なお「煎茶」の名は抹茶以外の茶を総称し,煎茶道をさす場合にも用いる。

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飲み物がわかる辞典 「煎茶」の解説

せんちゃ【煎茶】


茶の木の新芽で作る緑茶。日本茶でもっとも一般的なもの。新芽を摘み取って、発酵が生じないように短時間(20秒~2分程度)蒸した後、熱風にあてて水分を除きながらもみほぐして細くまっすぐに形をととのえ、乾燥させて作る。

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栄養・生化学辞典 「煎茶」の解説

煎茶

 緑茶の分類の一つ.通常飲まれる緑茶は大部分が煎茶の分類に入る.煎茶以外は玉露,かぶせ茶,抹茶,番茶などがある.

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世界大百科事典(旧版)内の煎茶の言及

【煎茶道】より

煎茶とは茶葉を湯で煎じて飲むこと,抹茶(挽茶(ひきちや))以外の日常に飲む茶あるいはその茶葉を総称する場合もある。茶の湯(茶道)に対して,煎茶の煎法,手前,作法を煎茶道という。…

【チャ(茶)】より

…これ以後の操作は乾燥,揉捻(じゆうねん),整形であり,茶の保存性や商品価値を高めるとともに,使用時の茶葉成分の浸出を容易にするために行う。煎茶の製造は蒸熱,粗揉,揉捻,中揉,精揉,乾燥の6工程からなる。この工程は日本で発達した手もみ製茶法を基礎とするもので,現在でも生産家の間で伝統技術として伝承されている。…

【売茶翁】より

…僧号月海,諱(いみな)は元昭,晩年は還俗して高遊外と自称した。煎茶人として知られ,煎茶の中興といわれ,また本朝煎茶の茶神とまで称賛される。12歳のとき肥前竜津寺で同寺開山の化霖道竜につき出家,ついで化霖の師万福寺の独湛性瑩(しようけい)に師事し禅の修行に励んだ。…

※「煎茶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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