改訂新版 世界大百科事典 「捏和」の意味・わかりやすい解説
捏和 (ねっか)
kneading
粘稠で変形に対する抵抗の大きな物質をかくはん(攪拌)する操作。〈こねまぜ〉ともいう。捏和操作は単に配合成分の混合にとどまらず,物質の内部構造に関連した物性の変化,あるいは単一成分にはみられない混合系としての新しい性質の発現を目的としている場合が多い。生ゴムの素練りは強い内部剪断力によりゴム高分子を切断してゴムの可塑性をよくし,加硫は逆に分子間の構造性を助長してゴムの弾性,強度,安定性を増す。また粘土や坏土(はいど),チョコレートや生練り粉の場合は,主成分の粉末を他成分の液体で包み込んだものの集合体として,適度の流動性,弾性,強度その他複雑なレオロジー的諸性質をもったペースト状あるいは可塑性混合物とし,最終製品形状への加工性やその品質,食品としての味をよくする。合成樹脂と固体粉末の複合材料についても類似の効果がある。これらの効果を目的とする操作は〈練る〉とも表現され,捏和は粉体工学分野での混練(液体分が少なくてぱさぱさした粉体の取扱いまでを含む),窯業分野での捏練と広く共通する意味をもち,しばしば総括して〈捏和および混練〉操作として論じられる。
捏和操作では原料に有効な剪断変形を与えることが必要で,粘稠な原料に強い剪断力を加える結果大きな動力消費があり,摩擦熱の発生も多い。粘稠物質は一般に温度の影響を強く受け,とくにその流動性は温度上昇とともに急激によくなるので,操作の容易性と製品品質の点から操作温度が決められる。
捏和装置としてはニーダーkneader,ミキサーmixer,混練機,捏練機などと呼ばれる種々の型式のものがある(図)。これらは強力な剪断作用を原料全体にまんべんなく繰り返して与え,原料の停滞付着部が生じないように容器およびかくはん翼などの形状がくふうされ,がんじょうな構造を有し,水蒸気や冷却水を通すジャケットなどの加熱・冷却機構を備えたものも多い。捏和の強力さを示す目安としてしばしば原料単位量当りの捏和所要動力が用いられるが,この値は1m3当り数十~数百馬力に達し,低粘度液のかくはん所要動力の数十~1000倍以上にもなる。
執筆者:山本 一夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報