屋内のごみやほこりを除去し、清潔にする機具。電動機で真空をつくり、ごみやほこりを吸い込む電気掃除機(バキューム・クリーナー)が一般的である。電気掃除機は、ごみやほこりを舞いたてることが少なく、戸や窓を閉め切っても掃除ができるうえ衛生的でもある。じゅうたん掃除の必要からも、需要が多くなった。家庭電化器具としては比較的古く、1924年(大正13)輸入品が展示された記録があるが、国産化は1931年(昭和6)で、きわめてわずかの家庭でしか使われていなかった。その後1950年(昭和25)にはわずか5000台、0.02%の普及率であったが、家電製品のブームに伴って普及も進み、1985年には97.4%になっている。1990年(平成2)には98.1%となり、以後この水準が続き、2004年も98.1%である。
[榊 道治]
毎分2万回転以上のモーターでファンを回して真空をつくり、ごみやほこりをフィルターで分離し、空気だけを排気孔から出す仕組みである。吸い口はブラシになっていて、プラスチックの延長管と自在に曲がるホースとで本体につながる。フィルターには、濾紙(ろし)や化繊が使われ、吸い込み力が弱まらないくふうがされている。さらに、ごみが捨てやすい機構も考えられ、使い捨ての紙袋がフィルターの役目をしているものもある。また吸い口も、単純な形のものから、じゅうたん用にエアタービンやモーターで回転ブラシを回してごみをとるものまである。
[榊 道治]
ポット・タイプ、シリンダー型のフロア・タイプ(床移動型)、アップライト・タイプ(箒(ほうき)型)、ハンド・タイプ(携帯型)などがある。現在の家庭用の主流はフロア・タイプで、ごみ処理方法などにもくふうがなされ、500ワット前後のものが主になっている。アップライト・タイプは、じゅうたんなどの床面掃除に適している。ハンド・タイプは、階段、机上、小面積の掃除に適し、2台目として使われることが多い。特殊な型としては、本体を固定したまま各部屋に配管して、ホースだけを移動し、各部屋に設置した吸込部を使って掃除するセントラル・クリーナーや、汚水を吸うことのできるクリーナーもある。
電気掃除機の性能は定量的に測定できないが、JIS(ジス)(日本産業規格)の「電気掃除機」(JIS C9108)では「吸込仕事率」という値が規定され、吸込能力の目安として使われている。
[榊 道治]
吸い込んだごみを集塵(しゅうじん)ケース内の空気の渦で分離する、紙袋不要のサイクロン方式の掃除機や、室内を自動的に動き回って掃除するロボット式のものも現れている。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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