じゅうたん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「じゅうたん」の意味・わかりやすい解説

じゅうたん
じゅうたん / 絨緞

広義には織物製の敷物総称であるが、一般にはそのうちの手織りの高級品をだんつう緞通)とよんで区別し、じゅうたんといえば機械で織った長尺物の床用敷物をさし、普通にはカーペットcarpetとよんでいる。床に敷物を敷く生活様式は西アジアの遊牧民族から生まれ、現在でも最高級品がつくられているが、それが発生した理由は次のように考えられている。これらの地方の気候は、ごく短い春があってその期間だけ美しい花園になるが、それが過ぎるとふたたび空の色と土の色だけの砂漠に戻る。そこで、春を住まいの中に閉じ込めておきたいという願いから、あの美しい花模様が生まれた。じゅうたんは貴重な財産で、移動のときはウマに積んで運び、必要なときは切り売りした。運ぶには薄いほうが有利であるが、絹を使うと重さは4分の1になる。こうして絹のペルシアじゅうたんが発生した。じゅうたんづくりの技術はやがて中国に伝えられたが、中国は農耕民族で移動の必要がないから、厚いものほど高級だと考えられるようになった。一方ヨーロッパに伝えられたじゅうたんは、イギリスで機械織りに発達して安くなり、大衆の必需品として広く普及するに至った。

 17世紀後半に宗教的迫害を受けた新教徒のだんつう職人たちが、ベルギーからイギリスのアクスミンスターAxminster、ウィルトンWilton地方へ移って機械織りの基礎をつくり、それが産業革命への糸口となった。機械織りじゅうたんの代表とされているウィルトンカーペットWilton carpetはこのようにして始まったのである。その後アメリカでもじゅうたんの機械化が始まり、1930年代には工業生産が軌道にのった。さらに1940年代にはタフテッドマシンtufted machineが開発され、本格的な量産態勢がとられるようになった。

 日本では明治中期にイギリスから機械を輸入したのが機械織りじゅうたんの始まりである。第二次世界大戦後は生活様式が洋風化されたため、じゅうたんの需要は急激に増大した。現在ではインテリア産業のなかで重要な地位を占めるに至っている。

[小原二郎]

種類と使い方

大別してウィルトンカーペットとタフテッドカーペットに分けることができる。ウィルトンカーペットは地糸に麻糸などを使い、羊毛合成繊維の糸を立毛状になるように織ったものである。立毛には毛切りcut pileとわな織loop pileおよびその組合せがある。品質の判定には立毛の原料、長さ、密度図柄色調などが基準になる。タフテッドカーペットは、綿または合成繊維製の荒目の基布に、立毛を多数の針で突き刺し、裏面にゴム系の塗料を塗って立毛を固定したものである。

 じゅうたんの長尺物は、床の全面に敷き詰めて使用する。また一枚物は床の一部に置き敷きにする。じゅうたんは床に柔らかさを与えて感触をよくし、音を吸収する効果があるが、日本は湿気が多いため、つねに乾燥に注意し、清潔に保つように心がけないと、ダニがわいたり、カビが生えたりするので、注意する必要がある。

[小原二郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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