デジタル大辞泉
「掠」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
かす・める【掠】
〘他マ下一〙 かす・む 〘他マ下二〙
① 盗む。奪い取る。他人の物を取って我が物にする。
※
書紀(720)天智元年三月(北野本訓)「是に由りて唐人、其の南の堺を略
(カスムル)こと得ず」
※半チョッパリ(1971)〈
李恢成〉五「
生協や本屋からかすめてきた書籍の」
③ はっきり見えなくする。ぼかす。また、人の見ていないところで事をする。ごまかす。
※
太平記(14C後)一〇「黒煙天を掠
(カスメ)たり」
※人情本・閑情末摘花(1839‐41)初「人の目を掠(カス)めたり」
④ ほのめかす。におわす。あてこすりをする。諷(ふう)する。
※枕(10C終)三六「『うとくおぼいたる事』などうちかすめ、恨みなどするに」
⑤ (①の動作が、速く行なわれるところから、鳥などの水に触れて飛び去るさまをいい、さらに転じて) 今にも触れそうにして通り過ぎる。すれすれに通る。かする。
※
篁物語(12C後か)「魂は身をもかすめずほのかにて君まじりなば何にかはせむ」
⑥ 意識の上に瞬間的に浮かんですぐ消える。
※
闘牛(1949)〈
井上靖〉「彼の頭を掠
(カス)めた疑問が」
⑦ 人に迷惑をかける。
※
新編常陸国誌(1818‐30頃か)
方言「かすめる 鹿島辺にて、人を迷惑さするを云ふ」
かす・む【掠】
(「霞(かす)む」と同語源)
[1] 〘他マ四〙
※書紀(720)継体七年六月(前田本訓)「伴跛(はへ)の国、臣が国の已汶(いもん)の地を略(カスミ)奪(は)ふ」
※虎明本狂言・ぬらぬら(室町末‐近世初)「かすんで
竹生嶋へまいってござる」
かそ・う かそふ【掠】
〘他ハ四〙
① 盗む。奪い取る。掠(かす)める。
※
続日本紀‐天平宝字元年(757)七月一二日・宣命「天つ日嗣高御座
(たかみくら)の次
(つぎて)を加蘇毗
(カソヒ)奪ひ盗まむとして」
② 人目をくらます。欺く。掠める。
※狂言記・二千石(1660)「おひまと申したりとも下されまいと存じ、かそうで京うち参りを致してござる」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報