放射能兵器(読み)ほうしゃのうへいき(その他表記)radiological weapon

日本大百科全書(ニッポニカ) 「放射能兵器」の意味・わかりやすい解説

放射能兵器
ほうしゃのうへいき
radiological weapon

たとえば中性子爆弾(これは放射線強化兵器とよばれる)のような小型の核爆発で生ずる大量の中性子を、放射化しやすい物質に吸収させて強い放射性物質をつくり、これから出てくる放射線で、長期にわたって人間を殺傷しようとする兵器。一例としては、非放射性のコバルトを混ぜておき、中性子で放射化して半減期約5年の放射性コバルト60をつくることなどが考えられる。放射能の強いコバルト60を最初から大量に爆弾に詰めて運んでいくことは困難だが、核爆発を利用してその場で大量のコバルト60をつくるというのであれば、恐ろしい放射能兵器となりうる。もっとも「汚い」核兵器ということになる。実際にはつくられていないが、核軍縮交渉のなかで問題とされたことがある。

服部 学]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「放射能兵器」の意味・わかりやすい解説

放射能兵器
ほうしゃのうへいき
radioactive weapon

放射性物質によって生物物体,水,空気などの環境を汚染させ,人間を殺傷する兵器。原子爆弾では,ウラン,プルトニウム核分裂生成物と,未分裂の少量ウラン,プルトニウムなどが放射能源となる。また核融合反応 (水素爆弾) から発生する中性子によって照射されたコバルトは放射性となり,人体に対して傷害を及ぼすガンマ線を放出し,半減期も5年で比較的長期にわたって地域的汚染区域をつくる。このようなものを兵器として利用するものをコバルト爆弾という。

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