文字通り政府がなんらかの形で運用に関与するファンドで、国の余剰資金を用い、外貨資産を対象に長期的な視点から国富の成長を目ざす。国富ファンド、あるいは英語名のイニシアルをとってSWFともよばれる。
政府系ファンドの原資は大別して二つある。一つは原油や天然ガスなどの輸出による収入を用いるもので、もう一方は外貨準備や財政余剰の一部によるものである。前者には、サウジアラビア通貨庁(1952年設立。以下同様)やクウェート投資庁(1953)、アブ・ダビ投資庁(1976)、ノルウェー政府年金基金(1990)、ロシア準備基金・国民福祉基金(2004年。設立当初はロシア安定化基金、2008年再編)などがある。後者では、シンガポール政府投資公社(1981)、中国投資有限責任公司(コンス)(2007)が代表的な存在である。政府系ファンドの運営は、国家戦略などとも関係することから、その情報開示は限定的なケースが多いが、2007年以降の世界的な金融危機ではアブ・ダビ投資庁がアメリカの大手金融機関シティグループへ出資するなど、急速にその存在感が注目されるようになった。
外貨準備や公的年金などの巨額資金を保有する日本においても、一部の資金を政府系ファンドとして運用すべきという主張がある。ただ、政府が他国の企業の株式を保有することは、株価変動と為替(かわせ)変動のリスクを負うことになる。保守的な性格の資金であるだけに、それらのリスクをどのように制御するかは大きな課題であるし、そもそもそうしたリスク資産への投資をすべきではないという意見も根強い。さらに、一国の政府が民間企業の株主となることに伴うガバナンス(企業統治)問題については、政府系ファンドが肥大化するにつれ、より踏み込んだなんらかの国際的な取決めが求められる。
[高橋 元]
『谷山智彦・福田隆之・古賀千尋著『政府系ファンド入門』(2008・日経BP社)』
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