国家が資本主義経済の展開を助成し、あるいは規制することを目的に、経済活動にさまざまな手段や方法で介入する場合に登場する経済制度の形態をいう。したがって国家資本主義の具体的な制度とその機能様式は、国家介入の目的や方法によって異なるが、いちおう次の三つの主要な形態に区別される。
(1)先進資本主義国における国家資本主義 高度に発達した独占ないしは寡占的な経済構造をもつ先進資本主義国にあっては、1930年代の長期不況や二つの世界戦争といった「危機」を契機に、市場経済の安定化や景気変動の緩和のための経済管理政策、さらには特定産業や企業の国・公有化政策などを推進し、経済への国家介入の諸制度が広く認められるようになった。このような独占資本主義経済の危機管理として制度化された国家の経済機能が広く認められる国家資本主義は、一般に国家独占資本主義とよばれる。したがって現在、とくに国家資本主義として特定化されるのは次の二つの場合である。
(2)社会主義体制への過渡期としての国家資本主義 社会主義体制への変革を目ざす政治権力が、それまでの資本主義的な私有財産制度や市場経済制度を部分的な公・国有化や政府による活動規制政策などを利用して徐々にかつ経済機能の面から改革しようとする、経済体制改革の過渡期に登場する経済制度形態である。ロシア革命後のソ連におけるネップ(新経済政策)や第二次世界大戦後の東欧諸国、中国革命後の中華人民共和国に登場した。このような国家資本主義が導入されたのは、革命に伴う混乱を回避し、また経済力が弱く経済活動を促進するためには私企業制度や市場の競争機能といった資本主義的制度を活用するのが有効であると考えられたからである。そして国家資本主義制度は、やがて社会主義体制への全面的な移行に伴って平和的に消滅するとされる。しかし最近の社会主義にあっては、私企業や市場競争の制度は、社会主義経済体制の発展と管理にとっても有効であるとする考えが強まっている。
(3)開発途上国における国家資本主義 日本など後発資本主義国においても、その発展の初期には国家による指導や産業化政策が広く行われたが、同様に自立的な産業経済の開発と発展を目ざしている現代の開発途上諸国にあっても、その微弱な経済力の育成と遅れた経済社会の環境と基盤の整備のために、国家権力指導による資本の集中的投資や技術・労働力の計画的投入、一定の経済計画の導入など、国家資本主義制度の意識的な活用が広く進められている。現在注目されている韓国をはじめとする東アジア「新興工業国」の急速な経済発展は、こうした国家に主導された国家資本主義の制度の有効性を示している例といえよう。しかし他面では、このような「上からの」資本主義化は、官僚制の非能率や腐敗をもたらすこともあり、このことがしばしば開発途上国の政治上の不安や持続的な経済発展の困難化を生み出す背景ともみられている。
[吉家清次]
『『食糧税について』(レーニン全集刊行委員会訳『レーニン全集第32巻〈1920~21〉』所収・1959・大月書店)』▽『岡稔・山内一男・竹浪祥一郎著『社会主義経済論』(1968・筑摩書房)』▽『渡辺利夫著『アジア中進国の挑戦』(1979・日本経済新聞社)』
国家の系統的・直接的な介入と統制を受ける資本主義。後進資本主義国(日本,ロシアなど)での国家による企業設立,資金供与,製品買上げの体制,現在のアジア,アフリカの新興国での国営セクターをさす。ソ連,中国,東欧でも革命後この育成が図られたが,これは共産党政権によるもので,社会主義へ進む準備の一環であった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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