機関投資家や個人の投資家から資金を集めて企業株式などに投資し、配当などの利益を分配する基金。数千億円規模の資金を投じて大手企業を買収するファンドや少額の投資で創業期を支援するファンドなど、多様な形態がある。一部のファンドは役員を企業に送り込むなどして経営にも関与し、収益力の向上を図る。かつては経営不振企業の株式を取得して強引なリストラなどを迫る「ハゲタカ」のイメージも強かったが、最近は薄れつつある。
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元本の増殖や果実(配当、利息、分配金など)の取得を目的に投資家から拠出された資金を集め、共同投資のスキーム(仕組み)を用いて運営される基金というのが直接的な意味であるが、そこにはそれを運営する機関や組織も包摂されることが普通である。広範な概念であるため、投資ファンドの種類は多様であるが、主要投資対象資産で区分すると、証券、商品、不動産などの各種ファンドが代表的である。近年は、これらの伝統的な投資対象に加えて、映画、絵画、ワインなどを対象に、その制作過程から関与していく形態も存在している。
一方、ファンドへの資金提供者である投資家への募集形態という視点からは、公募(不特定多数)と非公募(特定少数)とに区分される。前者は公募型投資信託が代表的な存在であるが、一般に投資ファンドといった場合は、それ以外の(つまり非公募の)ファンド形態をさすことが多い。それは、非公募型のファンドは情報開示(ディスクロージャー)が限定的であることから、ファンドの行動が注目されるようなときにも外部からは運用実態を把握することがむずかしく、その秘匿性ゆえに市場や社会の混乱を加速する面があるなど、大きな影響が懸念されるためである。そうした秘匿性にはまた、多くの投資ファンドが目標とする投資収益率が極端に高く、リスクとリターンのトレード・オフ関係(一方を追求すると他方が犠牲になること)を考慮する限り、いかがわしいイメージを与えがちであるという負の側面も付随する。さらに、高い目標収益率を実現するためにレバレッジ(外部資金の導入により自己資金の投資収益の向上を図ること)を駆使するケースが多く、この面でも健全性を重視する立場からは批判的にみられることが多い。レバレッジの極端な例としては、買収先の資産やキャッシュ・フローなどを担保とした借入れにより買収資金を調達するLBO=leveraged buy outが用いられることもある。そうした是非への評価は後述することとし、以下では二つの代表的な投資ファンドの形態について示す。
(1)ヘッジファンドhedge fund 株式、債券、商品、為替(かわせ)など幅広い資産を対象に、デリバティブ(金融派生商品)などの金融工学を駆使して、高い運用成果を目ざすものである。かつてアメリカの投資家ジョージ・ソロスGeorge Soros(1930― )が主導したクオンタム・ファンドQuantum Fundが有名である。ヘッジファンドは、1998年に大手のロングターム・キャピタル・マネジメントLong-Term Capital Management(LTCM)が経営破綻(はたん)に陥ったこともあり、危うさが強くイメージされてきたが、近年では制度改革に伴う透明性の高まりとともに、年金基金など保守的な資金の投資対象にも加えられるようになっている。
(2)企業投資ファンド 企業に投資する形態のファンドで、これはさらにいくつかのタイプに分類される。まず、ある程度成熟した企業の株式を既存株主から買い入れた後、経営に関与して企業価値を高め、第三者に売却して利益を得るバイ・アウト・ファンドbuy-out fundがあげられる。この系譜に連なる形態には、アクティビスト・ファンドactivist fundと再生ファンドがある。アクティビスト・ファンドは、「モノいう株主」として経営陣に対して企業価値を高めるような要求をしていくタイプで、かつて存在した「村上ファンド」はこれに類型化される。再生ファンドは、経営不振に陥っている企業や事業に経営のプロを送り込んで企業再生を図る企業(事業)再生ファンドと、破綻企業などに投資するディストレスト・ファンドdistressed fundとに細分されるが、これらはいずれも再生可能な事業資質や経営資源を保有していることが投資の前提となる。また、これらのファンドは、その貪欲さと屍肉(しにく)あさりとの揶揄(やゆ)を込めて「ハゲタカファンド」とよばれることもある。一方、未公開・未上場などの新興企業に投資するファンド形態としては、プライベート・エクイティ・ファンドprivate equity fundがある。これは、企業を支援することで株式価値を高め、将来的にIPO(株式の新規公開・上場)や他社への売却により利益を得ようとするものである。ベンチャー・キャピタルventure capitalはこの形態の一種である。
以上のように、投資ファンドには前述の影の部分だけではなく、光の要素も少なくない。とくに、企業の経営資源を有効に活用していくようなファンドの存在意義は評価されるべきである。その際、ヘッジファンドが認知されてきたように、情報公開による透明性の向上が、社会的に受容されるためには条件の一つとなる。ただ、情報公開の推進は、高い投資パフォーマンスを追求するうえでの桎梏(しっこく)となる可能性も無視できない。それは、投資ファンドの多くがオフショア市場(国内取引と切り離し、規制や課税などの面で自由度を与えた国際金融市場)などを積極的に利用することで、高い投資成果をあげてきた経緯があるからである。透明性を高めることは、こうした従来の運用姿勢やファンドの設立基盤などに関する自由度を縛ることにもなりかねず、結果的に投資効率の低下が避けられなくなるかもしれない。このディレンマは、非公募という形態による秘匿性を維持しながら高い投資成果を求めてきた多くの投資ファンドにとっては、改めてそのあり方が問われることともなっている。
[高橋 元]
『北村慶著『投資ファンドとは何か――知っておきたい仕組みと手法』(2006・PHP研究所)』▽『岡林秀明著『図解入門ビジネス 最新 投資ファンドの基本と仕組みがよーくわかる本――ファンドビジネスの全貌!』(2006・秀和システム)』
(熊井泰明 証券アナリスト / 2008年)
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