日本大百科全書(ニッポニカ) 「新金融調節方式」の意味・わかりやすい解説
新金融調節方式
しんきんゆうちょうせつほうしき
1962年(昭和37)11月以降、日本銀行は銀行のオーバーローンの累増を抑制することを目的として、金融調節の手段として債券オペレーションを活用するとともに、都市銀行に対して貸出限度額を適用することにした。これが当時、新金融調節方式とよばれたものである。それまで日銀は、経済成長に伴う民間の現金通貨の需要をもっぱら貸出金によってまかなってきたため、日銀貸出は増大した。これは銀行サイドでは、とくに都市銀行のオーバーローンの状態が恒常化したことを意味する。オーバーローンのもとでは、銀行はややもすれば自己の流動性の状況に応じて自律的に融資を行う基準を失うことになり、一方、当時の低金利政策のもとで金利政策の弾力的運営が制約されていた。新金融調節方式は、こうした金融の非正常な姿を改める意図で始められたもので、その後日銀貸出の累増は抑制されることになった。これは当時としては重要な意味をもつ措置であり、『日本銀行百年史』第6巻(1986)にも記録されている。しかし現在では、この「新金融調節方式」ということばは歴史的なものとなった。
[石田定夫]
『日本銀行百年史編纂委員会編纂『日本銀行百年史』第6巻(1986・日本銀行)』